黄燐焼夷弾という言葉の存在自体が黄燐を主剤とした焼夷弾の存在証明

米英軍は他の焼夷弾や爆弾と共に黄燐焼夷弾戦略爆撃に用いました。
無差別戦略爆撃で黄燐焼夷弾が大量使用された例としてハンブルク空襲が挙げられます。
http://web311.pavilion.net/2WWhamburg.htm
http://www.diplo.jp/articles03/0308-5.html

1943年7月24日。チャーチル首相が目をかけていたイギリス空軍爆撃司令官ハリス大将、通称ボンバー・ハリスは、ドイツ第二の都市であり主要港を抱えるハンブルクに対し、史上初の絨毯爆撃を開始した。天からの火によって滅びた旧約聖書中の町の名を取ってゴモラ作戦と名付けられた爆撃は10日間に及び、 5万5000人の民間人犠牲者を出し、町の半分を叩きつぶすことになる。300機から1000機の編隊による爆撃が、昼間はアメリカ軍、夜間はイギリス軍によって繰り返され、当時の大量破壊兵器である黄燐焼夷弾が数千トン投下された。それは時速300キロの爆風を引き起こし、燃焼温度は1000度に達した。戦争史上初めて火の玉が街路のアスファルトを燃やし、過熱した空に車や木々を吹き飛ばし、防空壕に襲いかかって避難民たちを生きたまま焼き殺し、別の者たちが安全だと信じて逃げ込んだ水路を数キロにわたって沸騰させた。

「時速300キロの爆風」は焼夷弾の大量使用によるファイヤーストーム現象であり、黄燐焼夷弾特有の現象ではありません。
黄燐の燃焼温度は高く、その高熱は時には金属を溶かし、時にはレンガを粉塵に変えます。
使用された黄燐焼夷弾は代表的なものでは30ポンド焼夷爆弾と棒状黄燐焼夷弾。(爆弾や焼夷弾はしばしば重量と爆弾形式が正式名称となります)
ハンブルクへの戦略爆撃には棒状黄燐焼夷弾数百万個、黄燐焼夷弾数万個(30ポンド焼夷爆弾等、他形式黄燐焼夷弾。8万個から9万個が通説)を含む、各種の爆弾や焼夷弾が使用されました。
黄燐焼夷弾には二硫化炭素溶液に黄燐を溶かしたものを使用したものや、燃焼中に再度爆発して消火に来た人間を殺傷するものもありました。
黄燐焼夷弾の識別は容易です。黄燐の燃焼による白煙と爆発で遠距離に飛ぶ火沫という黄燐焼夷弾の特徴は、広い面積から黒煙をあげる油脂焼夷弾や、火柱を吹き上げて火沫を撒き散らすエレクトロン焼夷弾とは明らかに異なるものですから。
二硫化炭素溶液型の黄燐焼夷弾は燃焼時に二硫化炭素や亜硫酸ガスといった毒性ガスを発生させました。
これらのハンブルクでの黄燐焼夷弾使用については昭和18年後半の新聞を読むといいでしょう。(当時での読みはハンブルグ)
図書館によってはこういう古い新聞を読めるところがあります。
旧字旧かなを読めないと厳しいですが、当時の新聞はかなり振り仮名がついているので基本的な日本語力があれば大丈夫と思います。
ハンブルクドレスデン、東京等、これらの戦略爆撃に他の焼夷弾や爆弾と共に黄燐焼夷弾が使用されたのは歴史的事実です。

  • 兵器には必ずしも型式名はありません。

爆弾(焼夷弾を含む)はしばしば名目上の重量や爆弾形式がそのまま爆弾の呼称や正式名称となります。
よって、必ずしも型式名があるわけではありません。
また、アメリカは、当然のことですが、自国の所有する秘密兵器や人道的に印象の悪い兵器のことを公開したがりません。(しばしば、追求されてもしらばっくれます)
で、アメリカが型式名まで公開している装備がアメリカの全ての装備だと思い込んでいるのがCCW氏などの人々。(彼らの頭ではF-117のようなかつての秘密兵器も型式名が公開されるまでは存在しなかったのでしょうね)

  • 焼夷兵器による死亡は焼死だけではありません。

焼夷兵器による死亡ですが、燃焼範囲や引き起こされる火災の範囲で焼死が発生するのは当然ですが、燃焼によって生じる毒性物質(一酸化炭素とか焼夷兵器の燃焼物とか)による中毒死、酸欠による窒息死、建造物倒壊による圧死、焼夷兵器の爆発による破片にあたっての死亡などが挙げられます。
http://d.hatena.ne.jp/kamayan/20051109
(死体画像があるので注意)
上記のURLの上の画像の青黒い死体は致命傷になるような外傷無しに死亡していることから、中毒死もしくは窒息死の可能性大。鼻血を出した形跡があることから中毒死の可能性の方が大。(死体は焼夷兵器の作り出す条件によっては燻製状態になります。黒い死体はそれかもしれません)
下の画像は焼け爛れて骨まで露出した死体。炭化が目立たないことから、高温で蒸発するかのごとく燃焼した可能性大。
ちなみに、犬などの動物に食われた死体でないことは明らかです。動物は人体の柔らかいところから食べます。腹、頬、内腿といったように。(鳥ならば目玉とかも)
硬くて毛も多くて食べにくい頭髪部分から好んで食べることなど考えられません。
で、動物に食べられた死体がどうなるかも知らずに適当な受け売りを言っているのがCCW氏であり、焼夷兵器による死亡が焼死だけに限らないということに思い至らず「青黒い死体は焼死した死体ではない」なんて見当外れな引用をしてきたのもCCW氏。

  • 焼夷兵器の使用は古くから強固な構造物内の標的に有効な戦術とされてきました。

第二次世界大戦においても米軍は、建造物内のドイツ兵殺害のために、あるいは洞窟内の日本兵殺害のために焼夷兵器を用いました。
強固な建造物内の標的への火攻めは古来より戦術の基本。
で、そんな戦術の基本も知らずに「榴弾の方が有効」なんてトンデモな主張をしていたのがCCW氏とか複数の人。

  • 焼夷兵器はその無差別殺戮性において化学兵器と変わることはありません。

その無差別殺戮性において焼夷兵器は化学兵器と同じくらい非人道的な兵器です。
また、人が溶けるかのように燃える風景、現場に残された多数の外傷の無い死体(おそらくは中毒死か窒息死)から、焼夷兵器の効果を知らない人が見れば化学兵器と勘違いするのも無理はありません。

この辺の資料としては基本的なところでは、「戦争の科学」、「図説 東京大空襲」あたりを読むといいでしょう。

http://www.kamiura.com/report.html

ベトナム戦争白リン弾は対人用として使われています。155ミリ榴弾砲の白リン発煙弾は元々、場所を示すために設計されましたが、状況に応じて対人兵器として用いられてきたというのは色々な軍関係の文書に書いてあることで、ある文書には「対人用の壊滅的兵器」と書かれています。これを“攻撃用兵器”と呼ばずしてどうするのかと思います。

先に引用した※1の中に、ファルージャ戦で白リン弾が使われた新たな証拠を見つけました。海兵隊員たちが作った手製の武器を紹介する中に白リン弾を使ったものがありました。60ミリか80ミリの迫撃砲白リン弾に、C4(プラスティック爆弾)の4分の1か半分を添えて 起爆コードを3回巻き付けたものです。戦闘が室内で起きた時に、敵を焼き尽くすために使うのです。これは白リン弾が砲兵隊だけでなく、市内に入った兵士が持参していたことを示すといえるので、白リン弾が広範に使われた証拠といえそ うです。

※1 http://www.military.com/forums/0,15240,79595,00.html

この広報官は、広報誌の「Army's Field Artillery magazine」の2005年3・4月号の記事を引用し、ファルージャ戦に参加した砲兵部隊の兵士の言葉を紹介しています。その兵士によれば、WP(白リン弾の略語)は効果的かつ多目的な武器で、HE弾(爆発性の砲弾)で効果が出ない場合に、武装勢力塹壕やトンネルに対して用いたということです。

国際条約集」より

ジュネーブ条約第一追加議定書
第三編 戦闘の方法及び手段並びに戦闘員及び捕虜の地位
第一部 戦闘の方法及び手段
第三五条(基本原則)1 いかなる武力紛争においても、紛争当事者が戦闘の方法及び手段を選ぶ権利は、無制限ではない。
2 過度の傷害又は無用の苦痛を与える兵器、投射物及び物質並びに戦闘の方法を用いることは、禁止する。
3 自然環境に対して広範、長期的かつ深刻な損害を与えることを目的とする又は与えることが予測される戦闘の方法及び手段を用いることは、禁止する。
第三六条(新しい兵器)締約国は、新しい兵器又は戦闘の手段若しくは方法の研究、開発、取得又は採用に当たり、その使用がこの議定書又は当該締約国に適用される国際法の諸原則により一定の場合又はすべての場合に禁止されているか否かを決定する義務を負う。

ダムダム弾のように特定の手段を規制しても新兵器や秘密兵器には無意味。ゆえに兵器をその効果で規制するのがこれらの条約。
黄燐(白燐)の対人使用は米軍人が言うようにジュネーブ条約違反。
書籍からの引用で分かるように、アメリカがこの追加議定書を批准していなくても米軍は(形式だけでも)条約を守る姿勢を見せています。
まあ、米軍兵士もいざ自分が捕虜になったときにジュネーブ条約による保護を受けられないのは嫌なのでしょうね。
アメリカ自体、イラク侵略戦争時、イラク兵捕虜を虐待しておいて、逆に自軍の兵士が捕虜となって虐待された途端、ジュネーブ条約違反なんて言い出したわけで、ジュネーブ条約の運用においても相変わらずのダブルスタンダード
で、こういう極当然な軍事常識を知らずに様々な迷言を残してくれたのがCCW氏。今更になって誤魔化そうとしても無駄です。何をさんざん言っていたのというのでしょうね。
ああ、それと資料から書き写したようなことをどれだけ書こうと、CCW氏、貴方の軍事における基本的知識の不足は明らかですので悪しからず。

追記

この記事は当時の私の無知による事実誤認が数多く含まれています。
あまりにもひどい部分については修正・削除しました。