誤解に対する回答

「■[白燐弾]焼夷兵器−焼夷弾化学兵器か通常兵器か」コメント欄より
http://d.hatena.ne.jp/D_Amon/20060112/p1#c

# flypaper 『D-Amonさんの主張としては、
少なくとも一般的には知られていないし、グローバルセキュリティなどの軍事専門のサイトにもアメリカ軍の装備として載っていないが、大量使用することにより広範囲を無酸素状態にし、粉末状の白燐の雲を発生させる白燐弾(白燐を利用した兵器)が存在するということでしょうか?

また、このエントリーの「中毒死・窒息死」の項では酸欠のことについて言及されていますが、焼夷弾の燃焼によって引き起こされる「酸欠」は酸素がまったく無くなることではなくて、人間が死亡や意識不明になる程度まで酸素濃度が減少するということではないでしょうか?』 (2006/04/27 12:28)

# D_Amon 『酸欠については通常の煙幕兼焼夷の黄燐焼夷弾でも大量使用すれば酸欠となります。
酸欠になるには対流による酸素の供給量より燃焼による酸素の消費量が大きければいいわけですから。
加えて焼夷効果による周囲の可燃物の燃焼も酸素の消費量を増やします。
ゆっくり燃える物質であれば酸欠にならないのであれば車の中で練炭自殺もできない理屈になりますし、そもそも焼夷弾の大量使用で酸欠が発生しないのであれば過去の戦略爆撃で大量の中毒死・窒息死が発生するわけもありません。
ファルージャ市街が黒く焼き尽くされたのは衛星写真で確認できることですし、それほどの焼夷兵器の大量使用であれば、過去の焼夷兵器の戦略使用の例にならい窒息死・中毒死が発生することは極自然なことで、ファルージャの多数の外傷の無い死体についても説明がつきます。

人が窒息死するのに完全な酸欠になる必要がないのは当然のことですが、そういう誤解を生む表記があれば指摘くださると幸いです。改めますので。』 (2006/04/27 18:53)

# flypaper 『1)練炭自殺の死因は一酸化炭素中毒です。車内の酸素が無くなるのではなく、体内のヘモグロビンが酸素を取り込めなくなって死ぬのです(これは「科学的な常識」だと思ってました)。というわけで、練炭自殺は「ゆっくり燃える物質でも酸欠(無酸素)状態を起こせる」という根拠とはなりません。(そもそもファルージャって密閉されてたんですか?)
2)上でも書きましたが酸欠=無酸素状態ではなく、酸素濃度が18%以下になることを酸欠と言います。人間は酸素濃度が10〜6%以下になると意識障害等が発生、6%以下で死亡します。過去の爆撃の犠牲者はこのようにして死んでいったのでしょう。
3)D_Amonさんも引用したページと同じところからの資料ですが、
http://www.swf.usace.army.mil/pubdata/fuds/5points/documents/asr/appendixc.pdf
ここによると、白燐を100lb(約45kg)使用しているM47A4でさえ「WP has mild incendiary effect」という表現となっています。
以上を鑑みると、やはり白燐弾(もしくは黄燐焼夷弾)は酸素を奪いつくすには不適当である、と思えるのですが。』 (2006/04/29 01:45)

# D_Amon 『1)酸欠→不完全燃焼→一酸化炭素発生→中毒死
加えて、あくまで「酸欠になるには対流による酸素の供給量より燃焼による酸素の消費量が大きければいい」ということの例。
皮肉にしては曲解が酷すぎますね。

2)私は酸欠イコール無酸素なんて主張はしていませんが。大体、無酸素になれば火が消えてしまいますし。そういうシャドーボクシングは勘弁してくださいね。
窒息死と中毒死(一酸化炭素等毒性物質についても取り上げ済み)と併記しているのに窒息死だけを問題にしているあたりもかなり悪質な否定論の臭いがしますね。

3)だから酸素を奪いつくすなんて主張をしていませんね。私が主張しているのは不完全燃焼が発生する程度の酸欠です。
ファルージャは閉鎖空間ではないですが市街の広範囲が焼き尽くされたわけで、そのような焼夷兵器の大量使用で引き起こされる大規模火災で酸欠が発生するのは至極当然のことなんですが。
空気は熱による上昇気流の結果、火災の周辺部から中心部に向かうように流れるわけで、そういう広範囲での大規模火災では周辺部から中心部にいくに従って級数的に酸素濃度が下がっていくわけです。
それに窒息や中毒による大量の死者を出した過去の都市戦略爆撃も閉鎖空間ではなかったわけなんですが。ハンブルク空襲なんて使われた主な焼夷弾マグネシウム系と黄燐系(だったはず)ですが、そういう性能的には焼夷効果の低い焼夷弾でも大量使用で火事嵐現象が発生し過半数の死者は窒息死もしくは中毒死だったと言われているわけです。
ファルージャ市街の広範囲が黒く焼き尽くされていることが分かる衛星写真ファルージャでそれだけの大規模火災が発生したことを意味しますし、それが米軍の攻撃の結果というのも明らかですね。そして、米軍はファルージャ白燐弾を焼夷兵器として用いたことを認めています。少なくとも米軍がファルージャの広範囲を焼き尽くして廃墟に変えるだけの焼夷兵器を用いたのは確実な事実です。(発表していないだけで他の焼夷兵器も併用したかもしれませんが、確実に確認できる事実だけを組み合わせるならそういうことになりますね)
数多くの外傷の無い死体はNBC兵器が使われていない以上、焼夷兵器の大量使用による副次効果(窒息死、中毒死、熱死)によると考えるのが妥当でしょう。』 (2006/04/29 18:06)

# flypaper 『なるほど、正直この反応は無酸素状態で起こるものであると勘違いをしていました。大変申し訳ない。
しかしそれだと白燐が気化して飛び散り、冷えて雲となるという部分がどうしても理解できないのです。

大火災が起きて酸欠となるのは分かりますが、なぜ白燐が残った酸素や外部から供給される酸素と反応せずに、気化してしまうのでしょうか?
12-04のエントリーの
>ただ、それらと爆発と燃焼で一気に破片と粉塵をばら撒いた場合とは状況が異なるのも当然ですね。
という部分だけでは到底納得できないのですが?

同じく12-04のエントリーでは
>建造物での火災でも局地的酸欠が発生することなんて良くあること
と書かれていますが、密閉空間でも無いのにその局地的な酸欠が、白燐が気化するまで持続するというのはどういう理由によるものなんでしょうか?

また、白燐弾に関するHPや本を読んでも、「火災による高熱と酸欠で気化した黄燐が冷えて雲となり、粉末となって広範囲に広がる」という説はこのページでしか見た事がないのですがそれについてはどう思いますか?他の人は誰も考えつかなかったんでしょうか?』 (2006/04/30 20:45)

# D_Amon 『・爆発で飛び散る破片
・酸欠による不完全燃焼での黄燐の燃え残り
・燃焼熱による沸騰蒸発
まず、このような要因で黄燐蒸気〜粉塵が発生するわけです。
で、このようにして燃え残った黄燐は日本やベトナムといった温暖で湿潤な環境下であれば酸化熱と五酸化二燐と水の発熱反応による熱ですぐに自然発火してしまいます。
しかし、砂漠気候の夜間のような寒冷で乾燥した環境下であれば、周囲に熱を奪われ空気中の水分と五酸化二燐の反応による発熱も少なく、結果として酸化皮膜に包まれた状態で長時間自然発火を免れて漂うことになります。
国際化学物質安全性カードにも記載があるように、条件が揃えば黄燐は「浮遊粒子が急速に有害濃度に達することがある」物質なのです。
http://www.nihs.go.jp/ICSC/icssj-c/icss0628c.html
ファルージャでは砂漠気候の夜間という寒冷で乾燥した条件のもとで使われたので、未燃焼の黄燐粉塵を周囲に撒き散らす状況になったことでしょう。
まあ、そういう風に未燃焼の白燐粉塵が漂うことがあるので「浴びたら燃え上がる前に服を脱いでどうたら」なんて対処法が紹介されたりしたわけです。
そのような未燃焼の黄燐粉塵は停止したり人体に付着したりすると発火しやすくなりますから。
寒冷で乾燥した環境下では人体のような暖かくて適度な湿度のあるものは黄燐に自然発火しやすい条件を提供する存在になるという側面を知っていれば、より白燐弾に関する報道の理解につながると思います。』 (2006/04/30 21:58)