軍備を減らして豊かな暮らしを

私は軍需が儲かる派と儲からない派の対立は事実に対する知識より認識の捻じれによるものと考えています。儲かる派は国家を食い物にして私腹を肥やす者がいるという意味で軍需は儲かると主張しているのに対し、儲からない派は国家全体では損失であることと冷戦後の大手軍事産業の企業成績を指して儲からないと主張しているのではないかと。
軍事費支出は社会全体から見れば明らかに損失です。
軍事費は社会保障や社会資本の整備による暮らしの向上には寄与しないという意味で資金の損失であり、働き盛りの人間を軍人として拘束することから労働力の損失です。
そういう意味では軍需は儲かりません。国家全体での儲けを考えれば軍需に金を使うくらいなら、その金は社会保障や社会資本の整備や減税に回した方がいいでしょう。その方が国家全体としては豊かに暮らせます。*1
戦後の日本の迅速な復興は「普通の国」であれば国防に使わなければならない分の資金や労働力まで社会資本の整備に回せたことも大きいというもの。それは敗戦による軍事力の解体と米軍による庇護を前提とした低武装によるわけで、そういう意味では日本が「普通の国」でないことが日本の繁栄につながったわけです。
軍事力は平時においては災害活動ぐらいにしか役立たないわけで、国家財政を考えれば国防費は必要最小限に抑えるのが賢明な選択というもの。
そういう社会全体から見れば損失でしかない軍事力が必要なのは、人間社会が未だ外交交渉の条件として経済力と軍事力がものをいう世界であるため。正義無き力は暴力。力なき正義は無力。暴力に対抗できる力が無ければ対話すらままならないことがあるという現実。
しかし、それは変えられないものではありません。外交により段階的に解決できる問題です。
果てしない困難が予想されますが対話により相互軍縮を行なうことです。脅威を力で捻じ伏せようとするのではなく、脅威自体を減らすのです。それは相互が国防費の重い負担から開放され、双方が勝者となれる関係。
私は国際協調主義と平和主義の国是に基づいて、率先してそのような外交を展開することこそが日本が尊敬される国となる道だと思います。
私には日本が「普通の国」になることが尊敬される国になる道とはとても思えません。このままでは「アメリカの犬」と蔑まれるのが関の山というものでしょう。*2
現時点では夢物語ですが、仮に国防費の削減が実現したとして、それで誰も傷つかないわけではありません。
軍事産業の統廃合はさらに進むでしょう。
軍事産業の国防費依存体質は明らかです。冷戦後の国防費削減に伴う統廃合、クリントン政権時代の好景気に反する株価の下落がそれを証明しています。
しかし、必要性が低くなった産業が淘汰されるのは必然。市場構造の変化による栄枯盛衰は民間も同じです。
だからこその社会保障でしょう。
国防費の削減に伴う軍事産業の再構築の結果、職を失う人がでても、そういう人々を救済する社会保障が充実していれば、その人々の再挑戦の機会は増えます。
国防費を削減して、その分を社会保障や社会資本の整備や減税に回すことは、軍事産業に限らず多くの人々に恩恵をもたらします。
それは社会全体でより豊かで平和な暮らしをする道です。


以上、世の中がそんなに簡単に動くわけがないことも知っていますし、我ながら理想論に過ぎるとは思うものの所信表明として。

*1:軍事力を略奪に使わない場合はですが

*2:実際、イラク戦争への追随は中東諸国での日本の評判を落としました