外貨獲得手段としての軍需産業

原書房世界軍事情勢〈2005年版〉」P91-92より

軍事3大国、軍需産業の動向

冷戦後、全世界的に軍備削減、国防費節減期を迎え、米国初め、欧州各国ともに、軍需産業界は生き残りをかけ、国内は勿論のこと、国境を越えて、再編期を迎え、軍需産業界は斜陽産業となった。
しかし01年米同時多発事件以降、アフガン、イラクを中心とする紛争の再発で、軍需産業界は再び活況を呈し始めた。

a.米、軍需産業、新兵器開発に再び活況

米国は、01年9月予想だにしなかった国土の政経中枢地区のNY、ワシントンへ同時多発テロ攻撃受け、全国民総決起、01年アフガン中心にテロ壊滅作戦、続いて03年イラクに対する大量破壊兵器の拡散阻止ねらいに開戦、加えてWMD拡散の危機に直面、米本土を初めとする同盟諸国へもMDシステムの早期配備の必要性に迫られ、米大手軍需産業界は受注増迎え、現在ロッキード・マーチンノースロップ・グラマンボーイング社等は活況を呈し始めている。

b.露、通常兵器の開発、生産、輸出1位独占

露は、2000年プーチン大統領就任以来、露製兵器の生産、輸出の拡大による外貨獲得を国策の柱の1つとして、大統領自ら軍需産業を督励、米国の通常兵器の年間売上げ50-60億ドルを目標に努力の結果、01年以降確実に年50億ドル以上を確保、米国を抜いて1位独占を続けている。
しかし、02年以降アフガン・イラク特需による兵器輸出は、米国との競合で横バイ状態、割安な戦闘機等を求める国への対応に努力している。

c.中国、宇宙開発で米露の仲間入りへ

中国は、冷戦後16年間国防費の2桁増続け、遅れていた軍備のハイテク近代化と軍事技術の開発に、とくに露の技術支援を得て、03年10月待望の有人宇宙船神舟5号の打上げに見事成功、米露と肩を並べ宇宙3大国の仲間入り果たし、今後の宇宙開発計画、次のとおり発表、
04.4 科学実験衛星2基(試験1、納星1)打上げ
10 気象衛星(風雲2C)打上げ
05. 有人字宙船(神舟6号)打上げ
06. 月面探査衛星(嫦娥計画)打上げ
10 無人探査衛星 月面着陸
20 火星探査(双星計画)
” 月資源回収

軍需産業は冷戦後は確かに斜陽産業でしたが、同時多発テロ以降、状況は変わりました。
「軍事は儲からない」と主張している人がどういう階層で儲かるとか儲からないとか主張しているのかよく分からないのですが、ある種の国にとっては軍需産業は有力な外貨獲得手段の一つです。
アメリカしかり、ロシアしかり、中国しかり。イギリスにしても、ドイツにしても、フランスにしても、イタリアにしても、スウェーデンにしても。
このような軍需産業による利益獲得もアメリカがFSX開発時に自国の機体を基にした開発をねじ込んできた理由の一つ。
「軍事は儲からない」が真とすれば、それはロシアや中国やスウェーデン軍需産業を外貨獲得手段とすることで儲けていることと矛盾します。軍事がどうにも儲からず国防のためにやむなく兵器生産しているのであれば必要最小限しか生産しないのが正解。しかし、現実はそうではありません。むしろ、外貨獲得のために輸出拡大を図っているのが現実。