階層分析は手段

社会を構成する人々の階層分析が「右傾化」の原因探求に利用されているのを見ると私は陳腐に感じます。それは私が階層分析を有効な宣伝を行なうための手段と考えているからです。
「右傾化」している人々に貧困層のような経済的弱者が多いのが事実としても、それを「不景気による経済的弱者の増加が『右傾化』の原因であり、景気が良くなれば解決するであろう」というように解釈する考え方には同意できません。
経済的弱者のような社会的弱者が鬱屈した不満を抱え込みやすいのは事実でしょうし、そういう不満を抱え込んだ人が不満を解消するための手段を求めがちなことも事実でしょう。
しかし、「右傾化」は不満を解消する手段の一つに過ぎません。不満は「現在の状況を作り出した体制への批判」に向かっても良いわけです。
そうはならないのは「右傾化」している人々になされている宣伝の影響というものでしょう。不満が体制批判に向かわないように別の方向に逸らすといった種類の宣伝の。
例えば、ネット上には以下に引用するような自民党に責任があることでもサヨクに責任転嫁するような宣伝がまかり通っています。

1 :諸君、ブラマンやφ ★ :2007/05/03(木) 19:05:21 (自動リンク防止のためID略)
 正規社員から非正規社員への流れが進んでいる。派遣や請負、
さらには日々ネットカフェでその日の職を探す人が増加し、最近では、
24時間営業のファーストフード店で夜を過ごす若者まで登場してきた
といわれる。若者に過酷な状況を強いるのは何なのか、そしてそこから
抜け出すことはできるのか。日本労働弁護団事務局次長の棗一郎
弁護士に話を聞いた。

――フリーターや非正規社員などからの相談を通じてわかる、今の若者
の現状とはどのようなものでしょうか。
 私はフリーター全般労組、個人加盟のユニオンなどを通じてフリーター
の人々と付き合うようになりました。実態は労働者派遣なのに、請負契約
を装うことで企業が雇用責任を免れる偽装請負、偽装雇用の事件を担当
してますけど、その部分の若者の現状が一番ひどいですよね。日本は
何でこんなになっちゃったのかなってぐらい…。ちゃんと雇用関係に
なっていないで、月に10万〜15万円とか手取りでもらって、どうやって
食べてるのかな、と。しかし、それでも安定した職がある人はまだ「マシ」で、
スポット派遣といったものも広がっています。
(中略)
――若者が好きなときに働きたいということから「非正規」という選択を
取っているという議論もありましたが。
 誰が好きこのんで非正規で不安定雇用を望む人がいますか。文句を
言えば、解雇されちゃうんですよ。賃金は安いし、社会保険も労働保険も
ない、いつ解雇されるかわからない。もちろん、プラプラしている人もいる
でしょうけど、30歳前後にして月給10万でどうやって食べていくんですか、
家族を作っていくんですか、また、結婚したり、家を手に入れたりるん
ですか。普通に考えればいるわけないじゃないですか。

(以下略、全文はソース元でご確認下さい)
ソース(J-CAST) http://www.pheedo.jp/click.phdo?i=da95eedf5e92e5a13bbe5075f6ca0b60


(中略)


96 :( 'A` ):2007/05/03(木) 19:20:30 (自動リンク防止のためID略)
>>1
その問いに答えるのは簡単です。
全共闘世代が、その既得権益を守るために、徹底的に団塊Jr.を犠牲にしたからです。
だから答は「お前らが言うな!この全共闘ブサヨ世代が!」となります。


(管理人より:もちろん>>96は間違っている訳ですが大体のネトウヨの想いを代表した見方
かもしれません。既得権益を守っているのは官僚+自民党なんですが‥更に自民党
構造改革で社会を2極化してフリータ等を悲惨な状況に追い込んだのですが‥)

「30歳前後で月給10万、どうやって食べていくんですか」…棗一郎弁護士、語る - 2ちゃんねるとネット右翼(ネトウヨ)ウォッチング&その分析

他には、対中ODA自民党親中派(旧橋本派)が主導しているのにサヨク批判に用いられたり、北朝鮮への米支援も自民党*1が主導しているのにサヨク批判に用いられたり。
私は「右傾化」の実態は、このような宣伝の結果だと考えます。
「不景気による経済的弱者の増加」は、自らの境遇に対する不満をぶつけるための、あるいは自己愛を満たすための「正義」を欲する人々が増える条件ではあっても、「右傾化」の直接の原因ではないでしょうという話。
「右傾化」に見られる歴史修正主義レイシズム・反弱者救済にしても、宣伝の間違いに気づけない情報弱者な人が、歴史修正主義レイシズム・反弱者救済を「正義」とし、反歴史修正主義・反レイシズム・弱者救済をサヨクとし「悪」であり「攻撃すべき敵」とする宣伝を鵜呑みにしているだけでしょうという話。

人間はいい加減に「扇動されやすさ」を克服すべき

この考えが正しいとして、そういう宣伝に対しては、その「正義」を砕く宣伝や、新たな「正義」を与える宣伝が対抗手段となりうるわけですが、私はそういう対抗宣伝に不毛なものを感じます。
そもそも、人々がそういう宣伝を鵜呑みにしなければ、そういう主張が蔓延することもありえないからです。
仮に対抗宣伝で短期的にはそういう宣伝を無効化できたとしても、そういう宣伝を行なう人がいて人々がそういう宣伝に対する耐性を身につけていない限り、人間は長期的には何度でも同じことを繰り返すことでしょう。
対抗宣伝の必要性については大いに認めるところですが、そういう宣伝に対する根本的な対策として人間はそういう宣伝に対する「扇動されやすさ」を克服すべきと私は思います。
「扇動されやすさ」が克服可能かは私にはわかりません。「扇動されやすさ」の克服が人という生き物の生来の性質に反した理想であるならば、それは達成し難いでしょう。
しかし、私は人は知識の獲得により「扇動されやすさ」を克服できる方に賭けています。「氏より育ち」*2という言葉を、完全にではありませんが信じているからです。

*1:自民党は米余りで困る日本の農家の米を買い取って北朝鮮に送ることで票田のご機嫌取りをしていたわけです。東南アジアの安い米を買って送った方が費用対効果が良いにも関らず。

*2:遺伝より環境が人を作るという意味で