アフガニスタンでタリバンが白燐弾を用いて攻撃していると米軍当局者が主張している件について

Officials: Enemy is using white phosphorus in Afghanistan
Stars and Stripes
Mideast edition, Thursday, May 21, 2009

当局者:敵はアフガニスタンで白燐を使用している
スターズアンドストライプス
中東版、2009年5月21日、木曜日


Enemy fighters used white phosphorus in another attack on coalition personnel in the Gayan district of Paktika province, Afghanistan, officials said.

アフガニスタンのパクティカ州ガヤン地区で連合軍要員への別の攻撃において敵戦士が白燐を用いた、と当局者が公表しました。


The attack Tuesday comes after a report released May 11 said there have been 38 declassified instances of insurgents having access to white phosphorus and misusing it.

報告書が公表された5月11日の翌火曜日、反乱軍の白燐の入手とその不正使用に関する38の機密解除された事例があることをその攻撃は示しました。(その攻撃に関する38の機密解除された事例は反乱軍の白燐の入手とその不正使用を示しています、と訳したほうが自然と思う)


Enemy fighters in the area overseen by Regional Command-East, which includes Paktika, made two other white phosphorus attacks over the past week, according to a news release.

記者発表によると、パクティカを含む東部地域司令部監督下地域の敵戦士は、先週以降、二つの異なる白燐による攻撃を実施しました。


White phosphorus is a smoke-producing agent used for screening troop movements, marking targets and illuminating an area and is not designed for use against personnel.

白燐は、部隊の展開を覆い隠すための煙幕生成物質としてや、標的をマークするためや、地域を照らすために使われるもので、人に対して使用するものではありません。


It burns fiercely and has a tendency to stick to skin. It continues to burn until it is completely consumed unless it is deprived of oxygen.

それは激しく燃え、皮膚にへばりつく性質を持っています。それは酸素を阻まれない限り完全に燃え尽きるまで燃え続けます。


A unit with the International Security Assistance Force found nine 82 mm white phosphorus mortar rounds May 16 in Bamiyan with a large weapons cache. The same day, an ISAF unit found a 107 mm white phosphorus rocket aimed at a forward operating base in Nangahar province.

国際治安支援部隊(ISAF)配属の部隊は、5月16日、バーミヤンで、大きな兵器隠匿場所と共に九つの82mm白燐迫撃砲弾を発見しました。同日、ISAFの部隊は、ナンガル州の前進作戦基地を狙う107mm白燐ロケット弾を発見しました。


The Geneva Conventions ban the use of incendiary weapons against civilian populations. The International Security Assistance Force uses white phosphorus "in accordance with theatre rules of engagement and international law," officials said in the release.

ジュネーブ条約は民間人の集団に対する焼夷兵器の使用を禁止しています。国際治安支援部隊は「交戦規程と国際法に従って」白燐を使用していると、その発表において当局は発言しました。

http://www.stripes.com/article.asp?section=104&article=62808

壊れる前に…: アフガニスタンの白リン弾経由で読んだ記事を直訳的に全約。

Afghan authorities have also said Taliban fighters may have used a burning agent ― possibly white phosphorus ― in a major battle on May 4, after doctors discovered unusual burns among the dead and wounded. President Hamid Karzai has said up to 130 civilians died in that battle; the U.S. blamed militants for deliberately putting civilians in harm's way.

医師たちが死傷者に普通ではない火傷を見つけた後、アフガン当局も、タリバンの戦士たちが5月4日の大きな戦いにおいて燃えている物質―もしかしたら白燐―を使用したかもしれないと発言しました。ハミド・カルザイ大統領は、故意に市民を危険な状況に追いやったとアメリカが闘士たちを非難したその戦闘で130人にものぼる市民が死亡したと言いました。


Doctors are treating 16 patients with severe burns from that battle, said Nader Nadery, an official with the Afghanistan Independent Human Rights Commission.

医師たちはその戦闘でひどい火傷を負った16人の患者を治療している、とアフガニスタン独立人権委員会職員のネイダー・ナデリは言いました。


Col. Greg Julian, the top U.S. military spokesman in Afghanistan, said the U.S. didn't use white phosphorus in last week's fight in Farah province.

アフガニスタンの米軍最上位スポークスマンであるグレッグ・ジュリアン大佐は、ファラー州での先週の戦いにおいて米軍は白燐を使用していないと言いました。


Farah's governor told the Afghanistan Independent Human Rights Commission that many of those killed in the battle had severe burns, Nadery said. The governor said that Taliban fighters may have attacked the villagers with a flammable material, though not necessarily white phosphorus, Nadery said.

ファラー州知事は、その戦闘で殺害された人々の多くはひどい火傷を負っていたとアフガニスタン独立人権委員会に話した、とナデリは言いました。
知事は、タリバンの戦士たちが村人たちを、必ずしも白燐であるというわけではないが、可燃性物質で攻撃したかもしれないと言った、とナデリは言いました。


The militants' use of white phosphorus as a weapon could cause "unnecessary suffering" as defined in the laws of warfare, U.S. spokeswoman Maj. Jenny Willis said.

闘士たちの白燐の兵器としての使用は戦争法における「不必要な苦しみ」*1を引き起こすこともありえると、米軍のスポークスマンであるジェニー・ウィリス少佐は言いました。


"This pattern of irresponsible and indiscriminate use of white phosphorus by insurgents is reprehensible and should be noted by the international human rights community," she said. Willis said the military doesn't necessarily know militants are using white phosphorus deliberately, but that its use is still "indiscriminate."

「反乱軍によるこのような無責任で無差別な白燐の使用は非難に値し、国際人権団体によって言及されるべきものです」と彼女は言いました。ウィリスは、軍は必ずしも闘士たちが白燐を意図的に使用していると確信しているわけではないが、それでもその使用は「無差別」ではあると言いました。

http://www.sfgate.com/cgi-bin/article.cgi?f=/n/a/2009/05/10/international/i033305D08.DTL&feed=rss.news

同、直訳的に一部翻訳。


実際にタリバンが報道されているような白燐弾を用いての攻撃を行っているのであれば、それは非難に値することだと思います。米軍やイスラエル軍による白燐弾を用いてのそのような攻撃が非難に値するのと同様に。
日本では報道が新型インフルエンザ関連で埋め尽くされているせいか、ろくに報道されていませんが、海外ではロイター通信などによってアフガニスタンでのNATO軍の白燐弾使用とそれによる死傷者に関する報道がなされています。そういうNATO軍への非難を招く報道に対し米軍のスポークスマンが「タリバン白燐弾を使用しており、白燐弾による民間人犠牲者はタリバンの攻撃によるものかもしれない」というようなことを言ってタリバンの方に責任を負わせようとしているのがこれらの報道というわけです。タリバンはそのような白燐弾の使用を否定しており、事態は責任のなすりつけ合いといった様相も見せています。


アフガニスタン:NATOが白リン弾使用 8歳少女負傷: アフガニスタン:一千万個の地雷の埋まる国(注:大火傷を負った少女のショッキングな画像が使用されています。そういう画像が心理的に無理な人は開かないようにしてください)
はそういう報道をまとめた記事です。書いてくださった方に感謝します。

アフガンの米軍医、 8 歳少女大火傷が白リンによると診断。 NATO 軍誤爆の疑い/ロイター - 薔薇、または陽だまりの猫
では「薔薇、または陽だまりの猫」さんがロイター通信の記事を全約してくれています。これにも感謝です。

黄燐
ではid:higetaさんが黄燐(白燐)について、その性質や米軍による使用の歴史などについて丹念に資料にあたって解説されています。資料的価値の高い記事ですので、是非、多くの人に読んでほしいと思います。


これらの報道では副効果として、白燐弾報道に対しそれを否定し「超兵器プギャー」という感じで笑い飛ばしていた人々の主張が米軍スポークスマンの発言により否定される形になっています。
例えば、以下に一部翻訳したロイター通信の記事のように。

Colonel Gregory Julian, a spokesman for the commander of U.S. and NATO forces in Afghanistan, General David McKiernan, confirmed that Western forces in the country use the chemical.

アフガニスタンの米軍とNATO軍の司令官であるデイビッド・マキャナン将軍のスポークスマン、グレゴリー・ジュリアン大佐はその地方の自軍がその化学物質(白燐)を使っていることを認めました。


"In the case of white phosphorus it is used on the battlefield in certain applications ... It is used as an incendiary to destroy bunkers and enemy equipment; it's used for illumination."

「白燐について言えば、それは特定の利用法で戦場で使用される...それは掩蔽壕や敵の装備を破壊するための焼夷兵器として使用されたり、照明のために使用されたりする」


But U.S. military training manuals say firing it at people is illegal. Its use in populated areas has been a persistent source of controversy.

しかし、米軍の訓練マニュアルは、それ(白燐)を人に向けて発砲することは非合法であると述べています。人口周密地域でのそれの使用は持続的な論争のもとになっています。

http://in.reuters.com/article/domesticNews/idINSP4951520090508

こういう米軍スポークスマンの発言はWikipediaにかつて記載されていたような

照明効果および焼夷効果は持っていない

http://ja.wikipedia.org/w/index.php?title=%E7%99%BD%E3%83%AA%E3%83%B3%E5%BC%BE&diff=22025009&oldid=22024992

という主張に対する完全な否定になります。
「白リン弾」の版間の差分 - Wikipedia
を見ると、Wikipediaにこういうことを書き込んだのはArumaddilo*2さんという人のようです。
2008年2月4日にされたこの記述は2009年1月15日に書き換えられるまでそのままでした。一年近くもこんな出鱈目がwikipediaに掲載され続けていたわけです。
この件に関しては、2009年1月のイスラエル軍によるガザ攻撃に関する報道以降は、さすがにそこまで出鱈目な主張がなされることはなくなったようです。
白燐弾報道を否定している人々がそのためには第二次世界大戦での米軍による黄燐焼夷弾の日本に対する使用の歴史まで否定するようなことまでしていた*3時期のことを考えると隔世の感があります。

*1:戦時国際法では「不必要な苦しみ」を与える兵器の対人使用が禁止されていることをうけての発言と思われます。

*2:利用者:Arumaddilo - Wikipedia

*3:模型とかキャラ弁とか歴史とか時事 - 模型とかキャラ弁とか歴史とかなど