マイナス金利による銀行の経営難についてこれが妙案と本当に思うのかお尋ねしたい

日銀のマイナス金利付き量的・質的金融緩和は銀行の収益を悪化させています。

地銀の収益が悪化している背景は複合的だ。人口減少や企業活動の低迷に伴う資金需要の低下が底流にある。潜在力のある地元企業の発掘や事業の多角化などを果敢に進めてこなかった地銀側の問題もあろう。
しかしそればかりではない。6年前に始まった日銀の異次元緩和により、収益の場がどんどん狭められてきた現実も重い。
集めた預金に払う利子と、それを企業や個人に貸して受け取る利子との差額が、典型的な収益源だが、限りなくゼロに近づいてきている。
相対的に安全とされる国債の売買も、日銀の比重が圧倒的になった結果、頼みにできなくなった。
そのような状態がさらに長期化するというのである。
一部の地銀は不動産関連の融資に傾斜したり、信用度の高くない企業への貸し出しを増やしたりするなど、リスクを膨らませている。
政府や日銀は、地銀どうしの合併を後押しするなどして、地銀が経営不安に陥らないよう目配りしていく構えのようだ。
しかし、主要な収益機会が奪われているという本質的問題にメスを入れない限り、改善は見込めまい。
今は大丈夫でも、ひとたび信用不安が発生すれば、公的資金の投入など国民負担が生じるだろう。地銀が貸し渋りや融資回収といった自己防衛に走れば、本来支えるべき地方経済を一段と衰退へ向かわせることになりはしないか。

https://mainichi.jp/articles/20190510/ddm/005/070/029000c

毎日新聞のこの社説では地銀が主題ですが、実際、地銀・信金の赤字転落ぶりはひどいものです

3行が赤字転落したのは2013年3月期以来。日銀のマイナス金利政策で加速度的に収益環境が悪化し、突発的な市場変動を吸収できる稼ぐ力がなくなってきた。地域の金融システムは綻びが見え隠れしてきた。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO41273880U9A210C1EE9000/

マイナス金利導入により銀行の収益が悪化することは当初から言われていたことです。

日銀が銀行の当座預金にマイナス金利を導入することで、決して避けられない事態があります。それは、銀行の収益基盤が悪化するということです。銀行は量的・質的金融緩和の影響もあって、巨額の資金を日銀の当座預金に預けています。マイナス金利を導入したら、日本の銀行への打撃は欧州の銀行とは比べ物にならないといえるでしょう。

https://toyokeizai.net/articles/-/103000

さらに深刻に懸念されるのは、日銀が当座預金金利をマイナスにする影響は、金融市場でのいっそうの金利の低下にもつながっていくということです。実は、当座預金にマイナス金利が採用されることよりも、金利の低下で融資の利ザヤが縮小することのほうが、銀行の収益基盤にとっては大きな痛手となってしまうのです。
日銀がマイナス金利の導入により意図しているのは、銀行が日銀にお金を預けても損をするようにして、そのお金を積極的に中小企業などへの融資に回すように仕向けるということです。その結果として、企業の設備投資や賃金が増えて、経済の好循環と物価の上昇が達成できるという効果を見込んでいるのです。
ところが、それは経済の本質や流れをまったく理解できていない愚策であるとしか言いようがありません。銀行が新たに日銀にお金を預けると目減りする仕組みができあがってしまったうえに、融資の金利までも引き下げざるを得ないとなれば、銀行の収益力が悪化するという事態は避けられないことであるからです。

そもそも、日銀の考えは根本的に誤っていて、企業は需要が見込めない限りは、融資を受けて設備投資などをしようとは思わないものです。むしろ融資を必要としているのは、資金調達に四苦八苦しているゾンビ企業がほとんどを占めているのです。ですから、日銀が採用したマイナス金利政策は、経済効率を高めるという金利本来の機能を麻痺させていることが否定できないわけです。

これは東洋経済ONLINEの2016/02/01 6:00の記事からの引用です。
需要が伸びなければ供給力不足にならない。
供給力不足でないなら供給力を上げる必要もない。
供給力を上げる必要が無いのであれば設備投資する必要もない。
設備投資する必要がなければ資金需要もない。
資金需要がないのに融資で利益を出せと言う方が無理難題。
設備投資を促すというのは供給力を増やす策であり、供給が需要を上回るデフレ環境でさらに供給力を増やさせようとする方が間違えていると思います。
マイナス金利により銀行が資金を融資に回さざるをえない状況に追い込めば、それは融資額は増えるでしょう。しかし、それは不良債権処理費用が膨らむこととほぼ同じで、銀行の収益を悪化させます。

それでは実際にはどうなったのかというと、日銀の資金循環統計によれば、邦銀の2018年末の国内貸出残高は504兆円となり、1998年末以来20年ぶりに500兆円の大台に乗せています。景気回復と低金利が追い風となって中小零細企業への融資が伸びたといわれていますが、実際の現場で起こっているのは、「ゾンビ企業に対して低金利で融資する」という事例をあげれば枚挙にいとまがないということです。地銀は金余りで融資競争にのめり込み、財務や返済に懸念がある企業にまで融資せざるをえない状況に陥っているのです。
その結果として、融資総額を増やした銀行は、増やさなかった銀行より収益力が落ちてしまっています。本来であれば、収益性が高い企業は低い金利で融資を受けることができる一方で、収益性が低い企業は高い金利でしか融資を受けられないはずです。しかし現実には、日銀の低金利政策が金利本来の機能を麻痺させてしまい、日本の経済効率を低下させてしまっているのです。

https://toyokeizai.net/articles/-/277408

実際にこのようになっていることは地銀の不良債権処理費用の膨らみぶりを見れば明らかでしょう。
こうした銀行の収益悪化は手数料の引き上げという形で利用者にも影響を与えています。

こうした中、銀行の店頭での両替や振込手数料を引き上げる動きが広がっている。三井住友銀行が昨年5月、みずほ銀行が1月に両替手数料を引き上げたほか、4月には三菱東京UFJ銀行も実施する。地銀の間でも振り込みや両替手数料の引き上げが相次ぐ。

https://newswitch.jp/p/12050

今のような収益悪化が続けば、銀行の救済のために公的資金注入が必要になるかもしれません。

日本銀行元理事の山本謙三氏は、地方銀行の将来的なリスクについて「今のような超低金利政策が続けば、地銀の自己資本は着実に低下していくので、どこかで資本注入を迫られる可能性がある」との見方を示した。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-04-22/PQC9EC6JIJUP01

マイナス金利付き量的・質的金融緩和にはこういう面もあり、それを継続し続けるのであれば、いずれ銀行の救済も合わせて実施しなければならなくなるだろうという話です。
これを踏まえた上で読んでほしいブックマークコメントがあります。

howlingpot 愉快なシャドーボクサーがいるので便乗すると、長短金利差は裏返せば国民負担なので、国民負担に近い形で銀行救済していいなら、銀行保有国債を担保に日銀がマイナス金利で融資すればOK。リフレ派は別に困らない。2019/05/11

http://b.hatena.ne.jp/entry/s/www3.nhk.or.jp/lnews/takamatsu/20190508/8030003614.html

id:howlingpot氏のこれを妙案と思うのかと、そう思うのであればそれは何故なのかを知りたいのです。
このコメントの解釈ですが、「長短金利差は裏返せば国民負担なので」は金融機関がマイナス金利でも国債を買う仕組みのことを言っているのだろうと思われます。
マイナス金利の10年国債を10年持っていれば損をしますが、建前上は途中で日銀が長短金利差分の差額を加えて買い取ってくれることになっていますので、金融機関は国債金利がマイナスでも売却益で儲けることができます。それは日銀の利益を減らすことでもあり、国民の財産となる国庫納付金を減らすことであり、既に実質国民負担で利益供与することで銀行救済しているよということなのでしょう。
これを踏まえれば、「国民負担に近い形で銀行救済していいなら」が前提なのか仮定なのかは、文脈的には前提であり「既に実質国民負担で銀行救済しているので」という意味でしょう。*1
つまり、「長短金利差による売却益により日銀が金融機関に利益供与していることは国民の財産となる国庫納付金を減らすことであり、既に実質国民負担で銀行救済しているのだから、日銀がマイナス金利で銀行に融資することで利益供与するという形で実質国民負担で銀行救済すればいい。ただし、融資額は銀行の国債保有額による。国債の価格低下リスクの抱えぶりに応じて救済される資格があり、国債を売却した銀行は救済対象ではない」ということでしょうか。
この解釈が正しければですが、低金利政策による収益悪化が銀行を苦しめているのに、その上で国債の価格低下リスクを抱えていないと救済対象にしないよというのはなかなかに鬼畜の発想だなと私には思えます。
長短金利差についても、私は銀行は(長短金利差で売却益を得られることを前提に)マイナス金利国債の安定消化に協力している側という認識だったので、このような扱いは傲慢に思えます。
何より、この方法は幾ばくかの収支改善にはなっても自己資本比率改善にはならないところが問題と思います。
国内基準行の自己資本比率には4%という規制水準があるので、融資を受けることは自己資本比率を下げることと同じ以上、仮に実施できたとしても、収支が黒字化しなければ限界はすぐに来ます。
「リフレ派は別に困らない」はこうすれば量的緩和を継続できるので困らないということなのでしょうね。
私には自己資本比率的に解決策になりえないし、実現性も甚だ乏しいように思えます。

補足

件のコメントは以下の私のコメントに対する反応と思います。

D_Amon 記事内容とは関係ないが、量的緩和継続のための低金利政策で銀行はよく潰れないな。銀行潰してOKな日本リフレは鬼畜、というインスピレーションをブコメから得た。自然エネ活用には蓄電設備の開発と整備が必要だね

http://b.hatena.ne.jp/entry/s/www3.nhk.or.jp/lnews/takamatsu/20190508/8030003614.html

私が日本リフレと呼んでいるのは「デフレは貨幣現象」と言い財政出動を重視しないリフレ派のことです。
財政出動も重視するスティグリッツらとは異質なのでそのように区別しています。
安倍政権の緊縮財政を見れば、ブレーンになっているのは財政出動も重視するリフレ派ではないでしょうね。
https://kojitaken.hatenablog.com/entry/20150813/1439417698
と同じような不信感を彼らに対して持っています。

このコメントの元になっているのは、

y-wood 電力会社よく潰れないな。潰してOKなブコメが鬼畜。

http://b.hatena.ne.jp/entry/s/www3.nhk.or.jp/lnews/takamatsu/20190508/8030003614.html

という発言です。
少なくとも私が見た時点では「潰してOK」というように読める発言は見当たりませんでしたが。
証拠として記事最後にその時点のはてなブックマークコメントを全引用します。

私自身は量的緩和には賛成ですが、それは景気回復の起爆剤として一時的に行うべきもので、同時に財政出動や再分配強化による大規模な需要喚起策を実施する必要があるものという認識です。
いくら量的緩和しても、日銀が保有して市場に流通しないのであれば、通貨の希少性は低下せず、インフレ効果はあまり期待できないと考えます。
また、いくらインフレを起こしてもそれ以上に人々の収入が増えないのであれば人々の暮らしは苦しくなり、それは消費の減退も意味するので、可処分所得増政策の並行実施は必須と考えます。
日本軍の軍票が急速なインフレを引き起こしたのは、大量に発行した上に大量に消費して流通させたからで、軍票がどこかにしまい込んであるだけなら市場への影響力はありませんよね。そのインフレは人々を苦しめましたよね。
人類が到達できない所にいくら金があることがわかっても、地上の金の価値が下がることはありませんよね。
現政権は貴重な量的緩和実施可能期間を無駄に食い潰しており、残された量的緩和実施可能期間は少なくなってきていると考えています。

2019/05/11時点のはてなブックマークコメント

howlingpot
howlingpot 愉快なシャドーボクサーがいるので便乗すると、長短金利差は裏返せば国民負担なので、国民負担に近い形で銀行救済していいなら、銀行保有国債を担保に日銀がマイナス金利で融資すればOK。リフレ派は別に困らない。

2019/05/11 リンク Add Star
D_Amon
D_Amon 記事内容とは関係ないが、量的緩和継続のための低金利政策で銀行はよく潰れないな。銀行潰してOKな日本リフレは鬼畜、というインスピレーションをブコメから得た。自然エネ活用には蓄電設備の開発と整備が必要だね

7 clicks

2019/05/11 リンク Add Star
II-O
II-O 太陽光発電は、未だに割高な太陽光パネルの廃棄費用と、廃棄時の有害物質に関する問題があるので、クリーンエネルギー万歳までの道のりは長いかもよ。

2019/05/11 リンク Add Star
venom
venom 安価で持続可能な電源の割合が高いのはよいことだ。出力制限技術も確立しているようだし。

2019/05/11 リンク Add Startei_wa1421filinion
sgo2
sgo2 発電量は山の形(大雑把に1/2)かつ昼間だけ(1日の約1/2)の発電だから、深夜の需要の少なさを考慮しても1日の総需要量に対しては1/4?1/3程度と考えた方が良い。(昨年の実績で24%/なお自然エネ合計は52%)

2019/05/11 リンク Add Star
y-wood
y-wood 電力会社よく潰れないな。潰してOKなブコメが鬼畜。

2019/05/11 リンク Add Starhogefugapiyoxsgo2
ukidousan
ukidousan 電力需要の谷間に全力出すから安価な蓄電方法がない今の太陽光発電は社会のお荷物

経済

2019/05/11 リンク Add Stary-woodsgo2
legoboku
legoboku 受給の制御が難しそう

2019/05/11 リンク Add Stary-woodsgo2
kenchan3
kenchan3 この時期は日照時間が7月並みに長いのに、冷暖房需要がすくないからね。

2019/05/11 リンク Add Staraust-blu-citm_yanagisaway-woodBOUSOUNINJINgnetychicken22
knight-a
knight-a 蓄電の技術があれば、相当エコな社会になるね

2019/05/11 リンク Add Star
privates
privates 太陽光発電の文句はいいから、早く本物のスマートグリッドを付けなよ。電力制御したいんでしょ?

2019/05/11 リンク Add Staraust-blu-cit
andalusia
andalusia ついに四国電力も出力抑制か。まあ来るべきものが来た感じ。/ ちなみに九電はもう平日でも出力抑制かかってる。

2019/05/11 リンク Add Star
nagaichi
nagaichi あと10年もしたら、伊方3号機は本気でいらなくなるんじゃないかな。

経済

2019/05/11 リンク Add Star
gnta
gnta 電力需要の少ない四国ならではの現象だけど天候に発電量が左右される太陽光発電を供給バランスに組み入れるのは大変なことなんだな

2019/05/11 リンク Add Starramyanawrssm_yanagisawa
hogefugapiyox
hogefugapiyox 今がちょうどいい季節(https://www.solar-partners.jp/pv-eco-informations--73880.html)だが、瞬間最大発電量だけで考えてもね…/ 実際、九電も苦労しとる http://www.nedo.go.jp/content/100866078.pdf

2019/05/10 リンク Add Staraust-blu-citsgo2
kuro_pp
kuro_pp 四国だとこれくらいの電力量なのか(夏や冬ほど需要がないというのもあるが)

2019/05/10 リンク Add Star
filinion
filinion 「太陽光発電で電力需要を賄うには日本中の屋根にソーラーパネルを置いても足りない。だから原発が必要だ」って言ってたTOSSの連中、今はそんなこと忘れたふりしてるんだろうな…。

3 clicks

2019/05/10 リンク Add Staraust-blu-cittei_wa1421zyzy

http://b.hatena.ne.jp/entry/s/www3.nhk.or.jp/lnews/takamatsu/20190508/8030003614.html

*1:仮に仮定だとすれば、何故国民負担が前提なのかということになります。量的緩和の受益者である輸出企業などが本来は負担するべきではないかと思います。