北朝鮮制裁決議案、採択を望む日本、両天秤の米英仏

北朝鮮制裁決議案に関して採決を避けるために中国が北朝鮮の説得に向かっているわけですが、それに対する反応から米英仏が制裁決議にそれほど本気でないことが分かります。
当初の予定の10日中の採決はアメリカが決議の延長に応じたことで先延ばしにされています。これはアメリカにとっては「北朝鮮制裁決議案の採決*1」でも「北朝鮮の6カ国協議復帰とミサイル*2発射の再凍結」のどちらでもよいことを意味します。
英仏に至っては議長声明と制裁決議の2段階案という折衷案*3を提示しています。制裁決議による北朝鮮の態度硬化や中国による北朝鮮説得への悪影響を懸念しているあたり、むしろ中国による北朝鮮説得が成功し、話し合いで解決できることを望んでいるように見えます。
当初10日中の採決は譲らないとし今も早期の制裁決議採決を望む日本は報道を見る限り制裁決議案共同提案4カ国の中では浮いています。
このままでは中国の説得に対する北朝鮮の反応次第では日本の面目が丸潰れになります。
そもそもアメリカが決議の延長に応じた時点で制裁決議案は「中露朝を追い込む政略」から「北朝鮮を6カ国協議に復帰させるための材料」に変質してしまいました。英仏による折衷案の提示がそれをよく表しています。
米英仏は両天秤ですので北朝鮮が説得に応じても応じなくても構わないのですが、日中に関しては北朝鮮の反応次第で外交面での勝敗が逆転します。(場合によっては中国がアメリカに頭を下げて何らかの形で米朝二国間交渉を取り持つかもしれません。中国は「頭を下げて勝つ喧嘩」ができる国ですから)
米英仏は外交の成果次第で中国に体面を保つ機会を与えることにやぶさかではないということ。
「日本の外交的勝利」はまだ確定していないのに浮かれている人たちがいるので一応。

*1:採択か中露の拒否権発動。中国は高い確率で拒否権を使用

*2:テポドンのような「長距離ミサイル」のこと。スカッドとノドンに関してはアメリカは問題にしていません

*3:http://www.nikkei.co.jp/sp1/nt58/