自衛隊の変質の方が問題な気がする

防衛庁から防衛省になることに関して、これで軍拡だの徴兵制だのと騒ぐのは違うと思うのです。
むしろ、これによる自衛隊の変質を問題にした方が良いのではないかと。
具体的には、自衛隊が「正規戦に備えた正面装備重視の重武装国防軍」から「治安維持任務等の不正規戦に備えた展開能力の高さ重視の軽武装遠征軍」に変化、国防のための変化ではなく米軍の支援軍になるための変化、そういう変化をしかねないのではないかということです。
省昇格には「自衛隊の国際平和協力活動の本来任務化」が含まれています。つまり、海外派遣が本来任務になるわけです。そして、その「国際平和協力活動」は、イラクの現状を見る限り、「アメリカの戦争の後方支援や後始末」に参加することも含まれるでしょう。
となれば、自衛隊は「国際平和協力活動」のために遠征能力や外国での治安維持能力を獲得しなければなりませんし、それは装備の調達にも反映されるでしょう。海自と空自には輸送能力や補給能力の高い装備を、陸自には輸送性や戦略的機動力の高い装備を、といったように。
戦闘機や装甲戦闘車両といった正面装備の調達数減や、海自の16DDH、空自のC-X*1陸自の機動戦闘車*2といった新装備はそういう自衛隊の変化を表すものと思います。海外派遣に対応した変化をするために自衛隊では「正面装備の縮小」と「遠征能力と治安維持能力の向上」が平行して行なわれ、正面装備を見る限りでは「軍縮」が行なわれるということです。
こういう変質は実際に為されるとすれば、自衛隊の海外派遣に反対な人にも、自衛隊の正面装備の縮小に反対な人にも、自衛隊専守防衛であることを前提に自衛隊に入隊した人にも歓迎できないものでしょうから、思想信条の違いを越えて共闘できそうな気もするのですが。
徴兵制に関してはおそらくその心配は必要ありません。
なぜならば「美しい国」は苦労知らずな既得権の継承者が貧困層に対して努力が足りないと非難する国。
徴兵制にしないでも食い詰めた貧困層が飢えないために自衛隊に志願してくれることでしょう。

16DDHを軽空母と呼ぶのはどうかと

自衛隊の新ヘリコプター搭載護衛艦であるところの16DDH(と18DDH)は空母万歳な人にも空母反対な人にも人気な艦艇。
しかしながら、16DDHはある種の人々の願望のようにVTOL機を積んで正規戦を行なうような艦ではないでしょう。
むしろ、大型輸送ヘリを含むヘリコプターの運用能力を見る限りではヘリコプター揚陸母艦という感じ。従来通りの対潜任務に加え、物資や車両を大型輸送ヘリで空輸するといったような輸送任務も目的としている艦な気が。とりあえず、ヘリ空母ではあっても軽空母ではないような。
それにしてもまあ、あのような艦艇でもクラス的には駆逐艦扱いというのが自衛隊の凄いところの一つと思います。あの排水量駆逐艦と称するのはどうかと。せめて、英語表記では航空巡洋艦扱いしてあげてはどうでしょうか(おいおい)。

*1:かなりの積載能力と航続距離がある開発中の国産輸送機

*2:http://www.jda.go.jp/j/info/hyouka/18/jizen/youshi/04.pdf、将来装輪戦闘車両についてはhttp://www.jda.go.jp/j/info/hyouka/14/jizen/youshi/06.pdfhttp://www.jda.go.jp/j/info/hyouka/14/jizen/honbun/06.pdf