「氷河期世代」の「右傾化」に対し言ってないことを読み取るマン

私は言ってないことを読み取るマン。
今回は「氷河期世代」の「右傾化」に対し言われていないことを読み取ります。
彼らが「団塊世代」や「既存左翼」に向ける「悪意」から、語られていない彼らの内面にある「真意」と向き合うために。


氷河期世代」の無職・パート・派遣の一部はネット右翼の全てではありませんが、その一角を占めています。
「30歳前後で月給10万、どうやって食べていくんですか」…棗一郎弁護士、語る - 2ちゃんねるとネット右翼(ネトウヨ)ウォッチング&その分析痛いニュース(ノ∀`) : 「何してるの?」 子供に話しかけられ、殴った無職の男(33)逮捕 - ライブドアブログなどからの憶測。
彼らは歴史認識問題などでとんでもないデマを信じ込んでしまっていたりすることからバカウヨクと呼ばれることがありますが、彼らの多くはバカではありません。素直で情報弱者なだけです。素直なのはそれまでの生涯で懐疑心を身につけられなかったため。情報弱者なのはそれまでの生涯で接した情報源が少なかったため。
懐疑心は教育に、情報源の量は生まれ育った環境*1に大きく影響されますから、彼らが素直で情報弱者なのは彼らの責任だけではありません。


彼らは国・自治体・企業の理不尽に刃向かう者を非難することから権威主義だの奴隷根性だのと言われますが、本質的にはそうではありません。それは権力に刃向かうという自らにできないことをする者に対しての羨望の裏返しです。
彼らは権力に刃向かうことを諦めています。それは自分と権力との力の差から権力に刃向かうことなんてとてもできないと思っているから。
彼らにとって権力に刃向かうというのはできないことでありバカげたことなのです。
そして、そう判断した自らの正しさを確認するために権力に刃向かう者が権力に踏み潰されることを望むのです。
権力に刃向かうことを諦めているがゆえの行動が、結果的に権威主義や奴隷根性という形を取るのが彼らの悲しいところです。
パートで家計を支える少女が茶髪を理由とした解雇通告に対し労働組合に加入しての運動で撤回したということがありました。*2
彼らは彼女を叩きましたが、それは自分達にはできないことをやり遂げた彼女に対する羨望の裏返しなのです。


彼らが匿名荒らしを行なうのは彼らの無力感と孤独感の裏返しです。
彼らは日々を無力感と孤独感に苛まれて暮らしています。低所得ということは移動や交際といった色々なことができないということでもありますから。
そして、その無力感を埋めるのが匿名空間での仮想的全能感であり、孤独感を埋めるのがネット上の同志との相互承認と共同体意識なのです。


彼らは自らを苦しい境遇に追い込んだ権力に対してではなく、彼らより恵まれた生活をしている庶民に対し「悪意」をぶつけます。
彼らと同じ庶民なのに、生まれ育った時代や環境が違うというだけで彼らより豊かな暮らしをしていることが許せないからです。
彼らの生活は苦しく、そこから抜け出せません。抜け出せないゆえ、彼らはせめて彼らより恵まれた生活をしている庶民が彼らと同じように苦しむのを望みます。そして、その望みを権力に託すのです。彼らより幸せに暮らしていた人々が彼らと同じように苦しむのを見て「ざまあみろ」と言うために。人々が権力に踏みにじられる姿を自らを権力と同一視して喜ぶために。

「論壇」

世の中にはそういう彼らの言動を当然のものとする人もいます。*3
彼は「非氷河期世代*4」や「既存左翼」に対し「悪意」をぶつけ、対応次第では「戦争」だと言います。
彼の語る「戦争」は現実の戦争ではありません。「自分が苦しいのと同じように他の人間も苦しむ状況」を示す観念的なものです。(靖国とか持ち出すあたり彼自身もそれを分かっていないのかもしれませんが)
彼が求めているのは苦しみからの救済です。そして、その救済が成らないというのであれば、他人も同じように苦しむことを求めているのです。「戦争」は相手にその選択を迫る「脅迫」の言葉です。
彼の「悪意」は彼自身の「助けて欲しい」という願望の裏返しです。
彼は非難することにより相手の行動が彼を助ける方向に変わることを望んでいます。
非難により相手の行動が彼を助ける方向に変われば、彼はそれを自分の行動の結果だと思い込めます。変わらなければ助けてくれない相手を非難し続けることができます。以降、助けてもらえるか「戦争」になるまでその繰り返し。
こういう二択をつきつけるのは、単なる憐憫で助けられることは彼の名誉が許さないからです。


彼自身は世の中を変えるために自ら行動するつもりはありません。発言するだけです。
助けてもらえなかった場合の世の中を変える手段として「戦争」を持ち出しますが、その「戦争」は権力がおこすものであり、彼自身が自ら行動するものではありません。
これは彼自身は自ら行動せず他者に何かをやらせようとしているという意思の表れです。
その意思は彼自身の無力感の裏返しです。その無力感は彼自身には世の中を変える力はないと思っていることに因ります。
一人一人の力は権力に対してあまりにも無力。彼は自らの力で自らの境遇を変えることを諦めています。そして、彼には自ら運動を組織して権力に刃向かう気概はありません。
だからこそ彼は権力ではなく他者に「悪意」をぶつけるのです。他者に自らの境遇を変えてもらうために。
彼は権力の側を支持し他者に「悪意」をぶつけることで他者を権力に向けて嗾(けしか)けようとしているのです。
これにより他者を権力に向けて嗾けることに成功して自らの境遇を変えることに成功しても良し、境遇を変えることに失敗しても、そもそも嗾けることに失敗しても権力の側に立って他者を罵倒すれば良し。いずれにせよ彼自身は今以上に傷つくことはありません。
また、そのようにして権力の側に立って他者を非難することにより、彼は権力に対して何もできない自分自身の姿を見ることを避けることができるのです。
今までの人生で惨めなまでに傷つけられてきた彼自身の名誉を守るために何重にも防壁をはっているというわけですね。


このような勝手な憶測の結果、彼及び彼に同調する人々の「悪意」の根源は彼ら自身の無力感にあることが読み取れました。
彼らは自らの無力感の裏返しで「自分を救ってくれない他者」を責めていたのです。そして、責めることで「自分を救ってくれない他者」に救済を求めていたのです。
そういう彼らの「真意」に向き合うにはどのようにすればよいのでしょうか。
それは無力感の解消。
一人一人の力は弱くとも団結することで権力に立ち向かえることを行動で示すことです。無力ではないことを示すことです。
それは組合を組織し労働者のための組合活動を再生することであり、個に分断された人々に大衆運動を再生することです。彼らが自ら捨てている労働基本権を行使することです。
そのようにして権力に働きかけることで権力から権利を勝ち取ることです。そのようにして彼らに希望を与えることです。
働いても生活保護より低い賃金しか貰えない状況であれば最低賃金がおかしいのです。
働いても正社員になれないのであれば雇用制度がおかしいのです。
そういうおかしいことを正していくのです。
茶髪少女解雇撤回のような小さな勝利でも構いません。権力に対して団結して立ち向かうことが重要なのです。
彼らの無力感に凍てついた心は、そういう権力に刃向かう行動に対して反発を示すかもしれません。しかし、構わず突き進むことです。そのようにして突き進むことが彼らの心に希望を与え、いつの日か凍てついた心を溶かすことになるかもしれません。
私は言ってないことを読み取るマン。言われていないことを読み取って突き進み続けます。

*1:親が教育に不熱心とか低所得とか子供に構っている暇が無かったとか。低所得であることは情報源を制限されることでもあります。書籍や有料番組のような有料情報にアクセスし難くなりますから。

*2:http://news.goo.ne.jp/article/asahi/nation/K2007051901290.html

*3:国民全員が苦しむ平等 戦争を切に願う: 反米嫌日戦線「狼」(反共有理)

*4:団塊世代」、「バブル世代」、「ゆとり世代」など