科学的にありえないことを書く自称科学者さん

scopedogさんの所でひどいコメントを見ました。
「1科学者として」さん曰く、

まさか、五酸化二燐ではなく気体状の白燐のことを言っているのですか?
だとしたら確かにかなりの毒性を有していますね。
ただし、存在できるならばの話ですが・・・
沸点よりも発火点の方が低く、空気も十分にあるのですよ?
そんなものが存在できるはずはありません。

白燐弾は化学兵器ではないと断言している人はちゃんと条約を読んでいないようだ。 - 誰かの妄想・はてなブログ版

白燐(黄燐)は沸点以下の温度でも気化するので科学的事実として気体の白燐は存在します。
物質が沸点以下の温度でも気化することは、水を例とすれば、お風呂の湯気とか、冷凍庫の氷が昇華により徐々に小さくなっていったりとかの現象で身近で常識的なものです。
お風呂の湯気を例に考えれば

20℃ではほとんど気化しないが、浮遊粒子が急速に有害濃度に達することがある。

http://www.jaish.gr.jp/anzen/gmsds/0571.html

というような記述も理解しやすいかなと思います。


黄燐マッチは毒性が強く、製造に従事する人が、黄燐を含む蒸気を吸い込み、あごの骨が分解する治療不能の骨エソや骨火症をひき起こしたり、幼児がマッチの頭部をなめて命を落したり、殺人や自殺などに使用された事もあった。

http://www.tanaka-match.co.jp/museum/history/1.htm

気体状の白燐(黄燐)が存在できるはずがないのなら、昔の黄燐マッチ製造工場の作業員がこういう症状になることもなかったでしょう。
そのニンニク臭を嗅ぐことも不可能ですね。

気体による害とは明記されていませんが、

災害事例

(1) 化学工場の作業員2名が中毒を起こした。下顎骨及び肝障害を起こした。

http://www.jaish.gr.jp/anzen/gmsds/0571.html

というような記述がされることも無かったのではと思います。


戦災体験での黄燐油脂焼夷弾による黄燐蒸気で化学火傷を負った人の事例紹介とかはあえてしない。
以前のように「黄燐に焼夷効果なんてない」「黄燐を主剤とした焼夷弾なんてない」「第二次世界大戦において米軍が日本に黄燐焼夷弾を使ったのなんて嘘」とかいう人々に戦災体験者が嘘つき呼ばわりされたり勘違いした人呼ばわりされたりすると悲しいので。
どうせそういう証言は証拠として認めないでしょうし。

追記(2009/01/31)

自称科学者さんがこういうことを書き込んでいました。

さらに比較に出してきた例が水とは・・・
酸素との反応性が非常に高い白燐と、安定な水とを同列にするとは
はっきり言って問題外です。
また、「20℃ではほとんど気化しないが、浮遊粒子が急速に有害濃度に達することがある。」
の引用などは全く意味が違います。
浮遊粒子は当然気体ではなく固体です。
さらに、この浮遊粒子が急速に有害濃度に達することがあるのは
20℃という低温かつ室内などの無風条件だからです。
粒子の表面だけが酸化しかつその酸化物が剥がれ落ちないばあい
酸化物の皮膜に守られるようにして未反応の白燐粒子が漂うことになります。

私が何のために例えを持ち出したのかをまったく理解していないようです。
お風呂で湯気が舞うためにも、黄燐の浮遊粒子が発生するためにも、気化してからの凝縮もしくは凝結という過程が必要であり、その過程の間は物質は気体として存在しているということの当たり前の例えなのに。
お風呂で湯気が舞うためには、水の蒸発→凝縮という過程が必要であり、お風呂の湯水全体で見れば、水は殆ど気化していませんが、その過程の間、水は気体として存在しているわけです。
同じように、黄燐は気温20℃という常温では殆ど気化しませんが、黄燐の浮遊粒子が発生するためには昇華→凝結の過程が必要であり、その間、気体の黄燐が発生しているわけです。黄燐は気化した途端に酸素と反応してしまうから気体の黄燐は存在しえないというのは、反応速度という要素を無視するという非科学的態度抜きにはありえないというものです。