ダマサレ

定義

騙し言説を流布する人をダマシ、騙し言説に騙されたままの人をダマサレ、騙され易く騙された状態から覚め難い人を天然ダマサレと定義します。

要約

世の中には騙され易く騙された状態から覚め難い人がいて、そういう人は懐疑精神に欠けていて人一倍虚栄心は強いという人格的傾向がありますという主張。それと騙され難く騙された状態から覚め易い人になるための提案。

「騙され易さ」と「騙された状態からの覚め易さ」による分類

「騙され易さ」と「騙された状態からの覚め易さ」は異なる要素です。
「騙され易さ」は懐疑精神の影響を、「騙された状態からの覚め易さ」は虚栄心の影響を強く受ける要素だからです。
懐疑精神は騙されることを阻害し、虚栄心は騙されたことを認めることを阻害します。
この二つの要素により人を以下の四つの集団に分けることができます。

A
騙され難く騙された状態から覚め易い人(懐疑精神:高、虚栄心:低)
B
騙され易く騙された状態から覚め易い人(懐疑精神:低、虚栄心:低)
C
騙され難く騙された状態から覚め難い人(懐疑精神:高、虚栄心:高)
D
騙され易く騙された状態から覚め難い人(懐疑精神:低、虚栄心:高)


このように分けた集団においてDに相当する人が天然ダマサレです。

騙し言説に騙されたままの人の総和、つまりダマサレ人口

懐疑精神は騙されることを阻害しますが確実ではありません。高能力な懐疑精神の持ち主でも騙し言説がツボにはまれば騙される可能性があります。高能力な懐疑精神は騙される確率が低いことしか意味しません。
騙し言説とその騙し言説に対する対抗言説が流布された場合、騙されている人間は以下の四つの集団に分けることができます。各集団の数は双方の説得力に強く影響されます。

TA
騙し言説に騙され対抗言説に触れてない少数のAの人
TB
騙し言説に騙され対抗言説に触れてない多数のBの人
TC
騙し言説に騙され対抗言説に触れたとしても聞く耳を持たない少数のCの人
TD
騙し言説に騙され対抗言説に触れたとしても聞く耳を持たない多数のDの人


TA、TB、TC、TDの総和が騙し言説に騙されたままの人の総和、つまりダマサレ人口となります。

天然ダマサレの人格的傾向

虚栄心に関する要素
面子やプライドを守ることに強い拘りがある
誤りを認めることで自らの人格が傷つくことを恐れるため、自らの誤りを誤りと認めようとしません。
自己正当化心が強い
自らにも責任がある誤りに対し、自らの責任を認めず他者に責任転嫁をします。
自大意識過剰
自分を大きく見せたがります。その心理は傲慢、尊大、自己中、自己愛、自己陶酔、自己憐憫といった形をとって行動に現れることがあります。
嘲笑的態度
冷笑や嘲笑は相手に対する心理的攻撃としても作用しますが、手っ取り早く優越感を得ることで虚栄心を満たす手段としても作用します。
懐疑精神に関するマイナス要素
集団の空気に影響されやすい
集団心理を利用した騙しに騙され易くなります。
批判に影響されやすい(反発・自己嫌悪)
批判に対して反発するにしろ自己嫌悪するにしろ冷静さを失うことは懐疑精神の低下を意味します。
権威に影響されやすい
権威の主張を鵜呑みにする人は権威を利用した騙しに騙され易くなります。
自信満々な態度に影響されやすい
イメージ戦略に基づいて計算された雄弁な騙しに騙され易くなります。
褒められると調子にのりやすい
おだてられると懐疑精神が低下し易くなることを意味します。
不意をつかれたりせかされたりすると冷静さを失いやすい
追い込まれると懐疑精神が低下し易くなることを意味します。
純粋で真直ぐ
騙しを鵜呑みにし易いことを意味します。懐疑精神以前の問題。


こういった懐疑精神に関するマイナス要素は少なからぬ人に見られる特徴です。
詐欺やカルトといった騙しは人がどういう状況で懐疑精神が鈍るかをよく研究しています。オレオレ詐欺のような劇場型詐欺は不意打ちとせかしで相手に冷静に考える時間を与えない他、騙す相手を詳細に研究した上で手口を考えているものもあります。
自己啓発セミナー型の騙しでは相手をある種の情報の枠で囲い、枠の中で出した「正しい答え」を褒め称え「間違った答え」には罵倒するというように犠牲者が自らの手で自ら自身を騙すように仕向けます。

ダマサレを減らすには

ダマサレを減らすにあたってまず重要なのは説得力のある対抗言説をダマサレに届くように流布すること。
これによりダマサレの内、集団TA及び集団TBに属する人を騙された状態から覚ますことができます。
こういう対抗言説の優れた例としては「反ジェンダーフリー」に対する「ジェンダーフリーとは」が挙げられるでしょう。
しかし、それでも聞く耳を持たない人には届きません。
根本的解決には騙され難く騙された状態から覚め易い人を増やすしかありません。

騙され難くなるには

騙されにくくなる手段として「懐疑精神自体の鍛錬」と「自らの心理的弱点の把握とその補強」が挙げられます。いくら高度な懐疑精神を身につけていても、自らの弱さを認められなければ、その弱いところを突かれて騙されることがあります。
懐疑精神の基本となる論理的思考力は実践を通して鍛錬することで向上可能です。そして、論理学を学ぶことは良い鍛錬となります。
自らの心理的弱点を把握することと、その弱点に対策を施すこともまた重要です。実践的な方法として騙しの手口を良く知ることが挙げられます。過去の騙しの事例を調べることで、騙しが人のどういう心理的弱点を突いてくるのか、そして、その心理的弱点は自分にも存在しないかということを調べることです。
ここで重要なことは、騙され難くなることは疑心暗鬼になることではないということです。むしろ、騙されないための知恵を身につけることは騙される不安からの解放を意味します。

騙された状態から覚め易くなるには

騙された状態から覚め易くなる手段としては「虚栄心を捨てること」と「客観的に自分がどう見えるかを考える習慣を身に着けること」が挙げられます。
虚栄心を捨てるというのは言うのは簡単でも実際にやるのは難しいことです。ただ、面子やプライドを守ることに自らの自尊心の軸足を置いている限り虚栄心を捨てることは難しいでしょう。自らの自尊心の軸足を謙虚さに置くことです。
「客観的に自分がどう見えるかを考える習慣を身に着けること」も実際にやるのは難しいことです。前提として自分とは異なる様々な価値観を知り、その価値観からはどう見えるかという想像力が要求されるからです。これを知れば大丈夫ということは無く、地道に見聞を広めるしかありません。
これらはそれなりに困難ですし、その困難さは人によっても異なるでしょうが、謙虚に自分を客観視できれば対抗言説に触れるまでも無く自ら騙された状態から覚められる可能性が増えます。

お勧め書籍

まさか自分が…そんな人ほど騙される―詐欺、悪徳商法、マインド・コントロールの心理学

騙しの手口と人の心理的弱点を知る上での入門書としてお勧めの書籍です。

論理学入門―推論のセンスとテクニックのために
哲学思考トレーニング
この二冊は論理的思考力の鍛錬の入門書としてお勧めの書籍です。