北朝鮮制裁決議案と中露
北朝鮮制裁決議案に中露が拒否権発動するか否かは、北朝鮮が崩壊したほうがましか存続したほうがましかの問題です。
北朝鮮制裁決議案が採択された場合、中露からの支援が断たれた北朝鮮には暴発(軍事行動)か崩壊か屈服かしか選択肢がありません。
屈服が崩壊を意味する場合は暴発か崩壊しかありませんし、北朝鮮の論理から考えればおそらく北朝鮮は屈服しません。(だから、中国が制裁について「逆効果しかもたらさない」と主張するわけです)
ゆえに実質的な選択肢は暴発か崩壊のみ。そして、暴発は結局は北朝鮮の崩壊を意味しますから、結論としては崩壊しか残りません。
中露は北朝鮮に制裁することで北朝鮮が暴発か崩壊かしか選択しないことを理解していますし、日米もそうでしょう。
そして、中露は北朝鮮が存続するのと崩壊するのとでは存続するほうがましと考えているでしょう。現実的に考えれば北朝鮮の崩壊に伴う難民受け入れなどの国際支援の負担を負いたくないですから。
よって、北朝鮮制裁決議案に対し中露に拒否権発動されたくないのならば、北朝鮮崩壊に伴う負担割合を中露が受け入れやすい形で提案するべきです。それは北朝鮮崩壊に伴う負担を日米も相応に負うことを意味します。
現実的に考えれば日米も北朝鮮崩壊に伴う負担を負いたくないでしょう。
そういう意味では北朝鮮制裁決議案の提出はこれを機会に中露の国際的立場を悪くするための政略です。
日米は中露が拒否権発動しなければ採択は確実と見ていますし、中露もそうでしょう。
中露は拒否権を発動すれば「北朝鮮のようなチンピラ国家に加担する悪党」として国際的立場が悪くなりますし、発動しなければ採択の結果としての北朝鮮崩壊による負担を結構な割合で負うか、北朝鮮存続のために制裁決議に違反して支援して国際的立場を悪くするかです。中露にとってはどれがデメリットが少ないかという嫌な三択です。
中露としては採決でその三択を突きつけられる前にその三択の前提を潰したいところ。(議長声明に拘ったり、アフリカ諸国に働きかけているのもそのため)そのために北朝鮮に強く働きかける可能性が高いです。その働きかけに北朝鮮が応じるかは北朝鮮の論理から考えると微妙ですが。しかしながら前提を潰せない限り中露は嫌な三択と直面せざるを得なくなります。