省人数化を進める軍隊、されど占領には歩兵の頭数が必要

安保ただ乗り論と日本の国防費 - 模型とかキャラ弁とか歴史とかでの自コメントに関連して。

D_Amon 『まあ、各国で兵器の自動化と無人化による省人数化が進んでいるので、大規模な占領軍を組織しない限り人員増による人件費増は重要な問題にならないのではないでしょうか。
むしろ高度な兵器を扱う高技能人員を揃える方が問題ですし、そのためには待遇改善の方が大事ではないかと。』 (2006/10/12 09:25)

様々な無人機や自動防御火器の登場など、現代は兵器の自動化と無人化が急速に進んでいる時代です。そこで問題になるのがそれらの兵器を扱う兵士の質。
そういう兵器を扱う任務を担う兵士は体力だけでは勤まりません。高度な兵器を取り扱える頭脳を持っている必要があります。
兵器の高度化により、軍隊は高度な技能の習得と実践が可能な優秀な人材を確保し長期間育成しなければならなくなってきているわけです。
優秀な人材を選ぶには試験による選抜が有利*1ですし、長期間の育成には長期雇用が前提となります。結果、現代の兵制には、基本的に短期雇用な徴兵制より、志願兵制による職業軍人の長期養成の方が適しているということになります。*2
兵器のハイテク化が進む現代では兵士の頭数より兵士の質の方が重要というわけですが、大規模な占領軍を組織しなければならない場合は別です。
未だ兵器は占領における歩兵の能力を代替できるに至っていません。よって、占領には兵士の頭数が必要となります。
占領には治安状態に応じて単位面積当たり何人という感じで人員が必要。もちろん治安状態が悪いほど、そして占領する地域が広大であるほど必要な人員は多くなります。
大規模な占領軍を組織することが如何に大変かはイラク戦争におけるアメリカを見れば明らかでしょう。
慢性的な人員不足で、ローテーションによる帰還の約束を反故にして部隊を派遣し続けたり、ろくに訓練を受けてもいない装備も足りない州兵を派遣したり、以前であれば身体能力や頭脳能力や年齢で落としていたような低能力な志願者でも頭数を揃えるために採用したりせざるをえない始末。イラクのあんまりな状況に自殺者や脱走者も続出。危険であることと民意に沿わない戦争であることが明白になるに連れ志願者数も減少。慢性的な定員割れに拍車をかけています。
志願兵制には、民間の方が待遇が良くて求人もある場合は人が民間に流れる、志願者数によっては定員割れしかねない、有事の際の増員が困難など、様々なデメリットがあるわけですが、イラク戦争ではそのデメリットばかりが露呈する形になってしまいました。
アメリカで徴兵制の復活が話題になるわけです。徴兵制は手っ取り早く頭数を揃えるには適した兵制ですから。*3

*1:前提として、優秀な人材が惹きつけられるほど待遇が良いことが必要ですが

*2:多大な国費を投入して育成した優秀な人材が民間軍事会社に引き抜かれたりすることを防止するために待遇改善とかも必要ですが

*3:日本が専守防衛に徹する限り徴兵制が導入されることはないでしょうが、日本がアメリカに追随するなどの理由で大規模な占領軍(あるいは治安維持軍)を組織する必要に駆られた場合、頭数を揃えるためにどういう手段を採用するかが問題になるでしょうね