慰安婦問題で新談話を出すなら河野談話後に発見された資料の反映は当然ですよね?

結果として、今、私たちが目にする「官憲が」「人さらいのごとく」連行したことを示す公文書は、戦後の東京裁判やBC級裁判でこれらの犯罪が問われた記録や「慰安婦」裁判の判決である。植民地にされていた朝鮮半島での犯罪は、戦犯裁判の対象にはならなかった。しかし、1990年代に韓国の「慰安婦」被害者が提訴した3件の「慰安婦」裁判では、全てが事実認定されている。
日本政府・軍は、敗戦前後に文書を組織的に焼却したが、それでも「慰安婦」制度に関する日本軍・政府の関与を示す公文書は、河野談話(1993年)までに300点以上が公表された。一方、その後も研究者など民間の手によって重要な文書が発見されており、この20年余りに国内外の公文書館等で発見された資料は500点以上を数える。この中には戦後に実施された法務省による元戦犯への聞き取りで、200人にのぼる「慰安婦」を集めたことが罪に問われることを恐れた兵士が、日本軍の資金70万円を使って隠蔽工作をし、功を奏したとの証言記録も含まれている(文書5)。これらの新たな公文書は今年6月、安倍首相に宛てて提出されたが、政府はそれらを「慰安婦」関連の資料として認める気配すらない。

早急な被害回復措置を

「証拠がない」のではない。歴史の事実に向き合おうとする姿勢が欠如しているのだ。日本軍の責任を示す証拠はすでに十分ある。日本政府は「慰安婦」制度の事実と責任を認め、一人でも多く存命のうちに被害回復措置をとらなければならない。歴史の事実をなかったことにして自尊心を保つのではなく、「日本は過ちを認めて加害者としての責任を果たす」という姿勢が必要なのである。

DAYS JAPAN (デイズ ジャパン) 2014年 10月号P25より引用*1。引用文中の文書5は「蘭・バタビヤ法廷事件番号第二五号 三警事件資料」*2
慰安婦」制度に関する日本軍・政府の関与は多数の資料に裏づけられています。
河野談話後も資料の発掘と研究は行われており、「慰安婦」制度とその問題点はより確固な歴史学的事実となっています。
河野談話後の研究成果を反映しなかった第1次安倍内閣閣議決定*3は安倍政権の欲望を示す卑劣なものであり、恥を知らない行為というものです。
否定論者の「証拠がない」という言葉は彼らの不勉強あるいは選択的無知の証です。歴史学的事実を認めないために知ろうとしないなら、それは歴史上の加害の事実を認めるのに勇気を要すような欲望があり、そして勇気がないのです。
否定論者が「真実」と思っているものは、むしろ彼らの人権感覚の低劣さを示すものであり、それを公表することは、否定論者の願望とは真逆に、世界に恥を曝し日本を貶める行為でしかありません。
そのことは「THE FACTS」に対する各国の反応と非難決議*4が証明しています。
しかし、否定論者はその体験からすら学びません。何が問題視されており、どのように非難されたのかすら知ろうとも理解しようともしません。
慰安婦問題は世界が中韓だのサヨクだのに騙されているからではありません。そのように考えるのは各国の人々の知性に対する侮辱でしかありません。事実は否定論者が聞く耳を持たないのです。
否定論者が仲間内だけで通じる信仰の世界に閉じこもっているのであり、その有様は信仰に反することは書いてあっても読めないかのようです。
私は引用した記事の「歴史の事実をなかったことにして自尊心を保つのではなく、「日本は過ちを認めて加害者としての責任を果たす」という姿勢が必要なのである」という記述を実に真っ当なものだと思います。
しかし、否定論者がこういう記事を読んで改心することがありえるかと問われれば、絶望的だと思わざるをえません。
否定論は事実に対する理解の問題というより欲望の問題であり、自民族中心主義的な欲望が、それによる自己イメージを損なうような情報を拒否し続ける限り、改心は無理だろうと考えるからです。
彼らは元「慰安婦」を嘘吐きババアと呼ぶような下劣な行いを「愛国心」のもとに行い続けるでしょう。
ただ、仮に安倍政権が慰安婦問題で新談話を出すとして、それが河野談話後に発見された資料やそれに基づいた研究を反映したものであり、内容もより人権感覚に適うものであれば、それは否定論者に少なからぬ衝撃を与えるのではないかと思います。左派政権であれば衝撃を与えるどころか、むしろ否定論者には逆効果にしかなりえないでしょうが、安倍政権であれば否定論者の陰謀論の世界を破壊するような衝撃がありえるかもしれない。
………無理でしょうね。安倍政権がそんな談話を出すわけがありませんし、仮に安倍政権がそんな談話を出しても否定論者はより深い陰謀論の世界に籠るのではないかとも思います。こういう予想を裏切ってほしいと思いますが、まあ、ありえないでしょうね。
安倍政権は否定論が原因の非難や活動に対し「河野談話を踏襲している」と噛み合わない反応をし続けるだけでしょう。必要なのは否定論に対して見える活動で対処することなのに。
それは日本が国連から求められていることでもあります。

慰安婦」問題では、日本政府による実態の認識や被害者への謝罪、補償が不十分だと懸念を表明。(1)人権侵害の調査を終え、侵害に関与した責任者の処罰(2)真摯(しんし)な謝罪と適切な補償による「慰安婦」問題の永続的解決(3)「慰安婦」問題を否定する試みの糾弾―を日本政府に求めました。

国連差別撤廃委 ヘイトスピーチ 法規制を/日本政府に勧告 「慰安婦」謝罪など要求