消費税と輸出大企業
消費税と輸出戻し税 - 模型とかキャラ弁とか歴史とかの補足。
消費税は購入者が払った消費税を販売者が政府に納める税制です。納税義務者は販売者となる事業者です。*1
相対的に消費税は、販売者が売り上げの内の消費税分を政府に納める税制ということになります。
消費税は二重課税を避けるために仕入れに払った消費税が還付されます。(仕入税額の控除)
販売が輸出取引に当たる場合には消費税が免除されます。販売者は輸出取引であることを証明することにより、売り上げの内の消費税分を納税しなくても良くなります。これを輸出免税といいます。*2
国内販売と国外販売
では、輸出免税の有無によって国内販売と国外販売で納税義務者の収支がどう異なるのか見てみましょう。
消費税率は5%とします。
国内販売の場合
納入業者は販売業者に製品を税込価格(本体価格+消費税額)105円で売りました。消費税納税額は販売価格の内の消費税分の5円です。
販売業者はこれを税込価格210円で売りました。納税額は10円。仕入に対する還付金が5円。よって差引納税額は5円です。
表にするとこうなります。
業者 | 仕入 | 売上 | 納税額 | 還付金 | 差引納税額 |
---|---|---|---|---|---|
納入業者 | - | 105 | 5 | - | 5 |
販売業者 | 105 | 210 | 10 | 5 | 5 |
政府には差引納税額の合計(5+5)の10円の税収があります。
図にするとこうなります。
納入業者は販売業者から受け取った消費税分を政府に納税。販売業者はお客から受け取った消費税分を政府に納税。政府は販売業者が仕入れに払った消費税分を販売業者に還付。政府は合計では販売業者の売上に比例する税収を得るわけです。
国外販売の場合
納入業者は販売業者に製品を税込価格(本体価格+消費税額)105円で売りました。消費税納税額は販売価格の内の消費税分の5円です。
販売業者はこれを国外に、まあ輸出免税で納税額が0円になるのでいくらでも計算には関係ないのですが、本体価格200円で売ったとしましょう。輸出免税で消費税納税額は0円。仕入に対する還付金が5円。よって差引納税額は-5円です。差引納税額-5円、つまり政府から5円受け取ります。こういう輸出に対する還付金を輸出戻し税ということがあります。
表にするとこうなります。
業者 | 仕入 | 売上 | 納税額 | 還付金 | 差引納税額 |
---|---|---|---|---|---|
納入業者 | - | 105 | 5 | - | 5 |
販売業者 | 105 | 200 | 0 | 5 | -5 |
政府の税収は差引納税額の合計の0円です。
図にするとこうなります。
納入業者は販売業者から受け取った消費税分を政府に納税。販売業者は輸出免税で納税無し。政府は販売業者が仕入れに払った消費税分を販売業者に還付。政府は合計では税収はありません。政府はお金を右から左に動かしているだけです。(図では左から右ですけどね)
トータルでは税収はありませんが、こういうお金の移動自体には労力というコストがかかります。
国外販売の場合、消費税は政府にとっては「徴収コストあって税収無し」なシステムということです。
消費税率が上がったら
では、消費税率が10%になったらどうなるでしょうか。
国内販売の場合
納入業者は販売業者に製品を税込価格(本体価格+消費税額)110円で売りました。消費税納税額は販売価格の内の消費税分の10円です。
販売業者はこれを税込価格220円で売りました。納税額は20円。仕入に対する還付金が10円。よって差引納税額は10円です。
表にするとこうなります。
業者 | 仕入 | 売上 | 納税額 | 還付金 | 差引納税額 |
---|---|---|---|---|---|
納入業者 | - | 110 | 10 | - | 10 |
販売業者 | 110 | 220 | 20 | 10 | 10 |
政府には差引納税額の合計の20円の税収があります。
納入業者も販売業者も納税額が増えることになります。
国外販売の場合
納入業者は販売業者に製品を税込価格(本体価格+消費税額)110円で売りました。消費税納税額は販売価格の内の消費税分の10円です。
販売業者はこれを国外に本体価格200円で売ったとしましょう。輸出免税で消費税納税額は0円。仕入に対する還付金が10円。よって差引納税額は-10円です。つまり政府から10円受け取ります。
表にするとこうなります。
業者 | 仕入 | 売上 | 納税額 | 還付金 | 差引納税額 |
---|---|---|---|---|---|
納入業者 | - | 110 | 10 | - | 10 |
販売業者 | 110 | 200 | 0 | 10 | -10 |
政府の税収は差引納税額の合計の0円です。
納入業者の納税額は増え、販売業者の還付金も増えます。
国外販売の場合、販売業者は消費税が上がり仕入価格が上がっても、その分、還付金も上がるので、トータルでは影響を受けません。
消費税率がいくら上がろうと輸出業者にとっては他人事ということです。
還付金は税制上まったく問題がない処理ですが、これにより消費税は国民全体に負担がある一方、輸出業者には負担がないシステムということになります。輸出業者は国内のインフラを使用した製品を国外に販売しつつ、その売り上げを消費税の税収として国内に還元しないというわけです。
まとめ
- 消費税は相対的に販売者が売り上げの内の消費税分を政府に納める税制
- 消費税は二重課税を避けるために仕入れに払った消費税が還付されます(仕入税額の控除)
- 販売が輸出取引に当たる場合には消費税が免除されます(輸出免税)
よって
- 国外販売の場合、消費税は政府にとっては「徴収コストあって税収無し」なシステム
- 消費税率がいくら上がろうと輸出業者にとっては他人事
消費税がいくら増税されても輸出業者の負担は増えません。法人税が減税されると業者の負担は減ります。
法人税減税と消費税増税の抱き合わせを行なうと、国民全体の負担は増える一方で、相対的に輸出業者の負担は減ります。
トヨタなどの輸出大企業の利益代表である経団連の主張は、輸出業者の利益追求としては正解ということです。
日本政府というか自民党は、そういう大企業の意向を受けてか、消費税の導入と増税、高所得者・大企業の減税、課税最低限の引き下げ、社会保障の切り捨てと延々と所得再分配の縮小*3を行なってきたわけですが、国民の総意がそういう政党を与党にしている以上、国民の生活が困窮するのも仕方がないことと思います。*4
*1:http://www.taxanswer.nta.go.jp/6121.htm
*2:http://www.taxanswer.nta.go.jp/6551.htm
*4:高所得層であればああいう政策を支持するのは理に適っていると思いますが