90式とM1A2の価格を比べるのは装備的にはおかしい
http://d.hatena.ne.jp/KampfGr_Zbv/20061014へのお返事。
情報RMAを「酸っぱいブドウ」扱いするかどうかの問題と思います。
情報RMAは欺瞞ではなく実際に「酸っぱいブドウ」かもしれませんし、そうなれば情報RMAのための電子装置は性能に貢献しない価格性能比を下げる装備となるわけで、性能面において90式とM1A2を比べるのはおかしくないとなるわけです。そういう電子装置を積まないM1A1と性能面において比べてもおかしくないともなるわけですが。
M1A2とM1A1の性能と価格とランキングについて
「新・戦争のテクノロジー」P87の表よりM1A2とM1A1の性能を数値化した部分を引用。
車両 | 火力 | 防御力 | 走行距離 | 対地圧 | 馬力/重量比 | 主砲の俯角 | 重量 | 最高速度 | 距離測定装置 | 車高 | 主砲 | 積載砲弾数 | 一分間の発射弾数 | 最大射程 | 機関銃1 | 機関銃2 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
M1A2 | 12 | 14 | 560 | 210 | 25 | 10 | 59 | 67 | レーザー | 2.40 | 120 | 40 | 6 | 4000 | 12.70 | 7.62 |
M1A1 | 12 | 11 | 560 | 210 | 27 | 10 | 55 | 67 | レーザー | 2.40 | 120 | 40 | 6 | 4000 | 12.70 | 7.62 |
これには電子装置や各種装備による評価は含まれませんが、この表で見る限りではM1A2とM1A1では装甲の強化による防御力の違いと、装甲強化に伴う重量増による馬力/重量比以外に性能差はありません。
ランキングは基本的にこういう戦車の性能を数値化し、得点化した上で合計得点を競うものです。件のランキングの妥当性についてはどのように性能を得点化しているかが分からないので判断を保留します。
米陸軍1991年会計年度の価格だとM1A2は約520万ドル、対してM1A1は約250万ドル。ただし、これは生産ラインがフル稼働していたとき(年産800両前後)の米軍の調達価格ですので、生産完了後の今の価格は常識的にはこれより高くなるでしょう。
M1A1の日本円価格について1990年代の軍事関係の本をざっとさらってみたところ、この250万ドルという価格を基準にしているためか、だいたい3億円台半ば前後の価格でした。
こうして見る限り第3世代戦車のM1A1と3.5世代戦車のM1A2の攻撃力・防御力・機動力には大差ありません。しかし当時の価格は倍程度異なります。価格向上の理由には装甲強化や車長専用潜望鏡の追加もありますが、一番大きいのは電子装置。それまで車両価格に占める電子装置の価格は1割程度だったのがM1A2では5割程度*1にもなって、価格向上の主要因になっています。
私の結論
情報RMAが実際に「酸っぱいブドウ」の場合、性能面において90式とM1A2を比べるのはおかしくありません。ただし、それはM1A1に対しても言えます。
価格性能比ではなく「価格装備比」においては90式とM1A2を比べるのはおかしいです。何故ならば90式はM1A2程の電子装置を装備していないからです。
第3世代戦車と3.5世代戦車を単純に価格で比較するのは、3.5世代戦車が高額な電子装置を装備していることから、装備的にはおかしいです。しかし、性能的にはその限りではありません。
*1:記憶で書いているので間違いかもしれません。ざっと探したのですが該当する資料見つからず。