「相手のため」メソッド

「相手のため」
いい言葉ですね。自分の行動は「自分のため」ではなく「相手のため」なんです、と宣言。
その言葉と共になされる行動は言葉通り確かに「相手のため」という場合もありますが、結構な割合で実のところ「自分のため」だったりする言葉。
ひとえに「自分のため」といっても、相手に自分の望みどおりの行動を取らせるための「操作の試み」だったり、周囲に私欲のためではなく他者のために行動する良い人と思わせるための「操作の試み」だったり、自分の利益のための自分の行動を私欲によるものではないと自らを騙すための「自己欺瞞」だったりと、色々な「自分のため」があるわけですが。


証券会社は「資産運用は貴方の豊かさのため」というCMを流して「貴方の資産運用のため」にサービスを提供しています。そのサービスを利用して豊かになれる人はどれくらいいるのかなあ。それに比べて手数料収入は手堅くていいですね。
自動車会社は「この車があれば家族サービスできますよ」というCMを流して「貴方の家族サービスのため」に多人数乗りの大きくて重くて燃費の悪い車を販売しています。その搭載能力を使うのは年に数回しかなかったりしますが。
売れないマンションを何とかして捌きたい不動産会社は「貴方の資産運用のためにどうですか。家賃収入も得られますよ」と電話でセールストーク。でも、その物件、数十年の分割払いが終わる頃には無価値になってるんじゃないですか。
まあ、そういうのが商売というものなんでしょうけどね。相手の行動を誘導せんとしての「操作の試み」が露骨過ぎてぎょっとしてしまいます(嘘)。


『「危ない海兵隊員」とわかっているのに暴行された沖縄「女子中学生」』なんて記事を掲載した週刊新潮は性犯罪被害者の自宅を“直接取材”しておいて「被害者に配慮しつつ」なのだそうです。性犯罪被害者の落ち度を問題にし、あたかも事件の責任は被害者の側にあるかのように書いておいても「被害者に配慮しつつ」なのだそうです。セカンドレイプ以外の何ものでもないですね。
それもこれも再発防止のためだそうです。「相手のため」、「皆のため」というわけですか。もうね、白々しすぎて反吐がでます。


「そんな不快なことをすると皆からの評価が下がって貴方のためになりませんよ」と言う説教おじさん。不快なのは皆ではなく貴方ではないですか。下がるのは皆からの評価ではなく貴方からの評価ではないですか。相手のことを思って言っているのではなく、自分が不快なので相手を黙らせるためにそういう言葉で脅しているのではないですか。私憤を公憤にすり替えている貴方に対して皆からの評価が下がっていますよ。
そういう説教おじさんって珍しいものではありませんけど、それなりに聡明な人だと思っていた人がそういう行動をすると落胆してしまいますね。*1「そういう説教をするのは貴方のためになりませんよ」と言ってあげたくなります。嘘です。「貴方のためになりませんよ」なんて、そんないかにも相手のことを思って言っているような恩着せがましい言葉、恥ずかしくて使えません。「そういう説教をしていたら批判されるのも当然。孤立感を感じることになっても仕方がないですね」くらいが精一杯。こういう言葉も「操作の試み」的な脅迫として作用するわけですが、突き放している分、恩着せがましくなくてモアベター


いやいやいやいや、やっぱり恥ずかしいですね。相手のための行動だと悟られかねない形で発言してしまうのは。
俺はエゴイストだから自分の利益のためにやっているんだぜ。自分のためにやっていることが偶々相手のためにもなっているだけなんだぜ。なんていう方が恥ずかしくなくていいですね。
恥ずかしくないこと超重要。



というように偽悪者は大変恥ずかしがりやさんな生き物です。
良い子の皆さんはそういう偽悪者の自意識を突いて遊んだりしてはいけません。(「○○するのは悪い子」メソッドによる「操作の試み」)
誰だよ。

*1:うひょー。「それなりに聡明」なんて「そういう評価をする御前は何様なんだよ」という感じですね